2002年2月20日(水)「しんぶん赤旗」
二十日が六十九回目の命日に当たる作家の小林多喜二の代表作『蟹工船』のスロバキア語訳の陰には、日本人によるエスペラント訳(エス訳)があった――そうした事実がこのほど明らかになりました。
エス訳をしたのは東京・世田谷区に住む栗栖継(くりす・けい)さん(91)。事情を明らかにした栗栖さんのエッセーが『センナツィエーツァ・レヴオ』(パリに本部がある労働者エスペラント運動の世界組織「サート」の機関誌)最新号のトップに掲載されました。表紙には小林多喜二の記念切手(二〇〇〇年発行)の写真を載せています。
戦前、日本共産党を支持して活動した栗栖さんは特高に何度も逮捕され、小林多喜二虐殺のニュースも警察の護送の途中で知りました。
一九三四年、出獄した栗栖さんはソ連のエスペランチストからのすすめで『蟹工船』のエス訳に取り組み、作家の貴司山治の助けで、大量にあった伏せ字を全部復元した翻訳を完成させました。
戦況の悪化でそのエス訳は結局、出版されませんでした。戦後、栗栖さんがエス語で文通したスロバキアのジャーナリストが、栗栖さんのエス訳からスロバキア語に翻訳。一九五一年に発行されました。
栗栖さんは「スロバキア語とよく似たチェコ語訳の『蟹工船』は、伏せ字だらけの本が底本です。重訳が必ずしも直接訳に劣らない一つの例証です」と話しています。
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