2002年2月23日(土)「しんぶん赤旗」
日本政府が人道援助で建設した国後島の緊急避難所兼宿泊施設=通称「ムネオ・ハウス」をめぐる入札介入疑惑――。日本共産党が国会で暴露し川口順子外相が認めた同省内部文書からは、自民党・鈴木宗男議員の人道援助私物化にとどまらず、外務省自身の“共犯関係”疑惑が浮き彫りになってきます。
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「ムネオ・ハウス」は、もともと政府の「北方四島住民支援」の一環として一九九八年から計画されてきたものです。
外務省ロシア支援室は、早くから「鈴木官房副長官より…地元企業を使うことが重要であるとの示唆」(文書(1))と圧力を受けていました。鈴木議員は二十日の参考人質疑で「私は、外務省のラインに沿ってやりとりをしている」とのべましたが、実態は“外務省が鈴木議員のラインに沿って仕事をした”のです。
その第一が、入札参加資格の設定で鈴木議員のいいなりになった点です。外務省は当初、「入札参加を『北海道に本社を有する者』に限る」としていましたが、参加資格については(1)道開発局基準でBランク以上(約二百社が対象)(2)「資本金1億円、従業員100名以上」(若干絞り込める)(3)道開発局基準でAランク以上(五社のみ)の三つの選択肢を考えていました。
ところが、鈴木議員が「200社もいらないだろう。多すぎる」「いっそのこと地域を北海道内ではなく根室管内に限定してはどうか」(文書(2))と修正を要求。「根室管内ではなく道東では如何(いかが)か?」と外務省がもちかけても「やはり根室管内だろう」と拒否されました。
外務省は「根室管内」とした場合、「1社しか該当企業がない」(文書(2))ことを承知で、これを受け入れたのです。
外務省は、工事を発注する支援委員会側から、入札参加資格を「根室管内」とした場合、入札の公正さという点で「事務局として持ちこたえられない」(文書(2))と通告されていました。「北方四島」の旧島民は根室管内以外にも居住していて、「根室管内には旧島民が多数居住している」(鈴木議員、文書(2))という理由は成り立たないからです。
ところが、外務省は鈴木議員の要求を拒否するのではなく、入札参加資格の「公告」に偽装工作をほどこしました。「入札参加資格は『北海道内』としつつも、施工実績のところで『根室管内において施工実績を十分有する者』として…実質的に地元の業者が有利なように配慮」(文書(2))したのです。
実際の公告も、この案の通りにおこなわれ、実質的に根室管内以外の業者は入札から締め出されました。外務省が鈴木議員と一体で、公正な入札を装いながら、偽装工作をおこなったからです。その結果、根室の渡辺建設工業だけが入札に参加しました。
第三は、予定価格流出の問題を知りながら、その隠ぺいに手を貸した疑惑です。
「ムネオ・ハウス」の入札(九九年七月)一カ月前に、設計を受注していた大手コンサルタント会社・日本工営の建築士が北海道・釧路市の鈴木宗男議員事務所にいき、「(鈴木宗男議員の)宮野秘書からは渡辺建設の渡辺及び犬飼建設の犬飼の両社長…を紹介された」(文書(3))のです。
この建築士は、同入札予定価格について知り得る立場にあり、入札予定価格をもらした疑いがあります。
支援委員会事務局はこの事実をつかみ、九九年十一月、日本工営の地域計画部長を呼び、外務省ロシア支援室首席事務官同席のもとで調査を実施。同年十二月末には、日本工営社長から「工事入札以前に関連情報を外部に漏らしたことに関し深くお詫び申し上げます」というわび状(文書(4))を支援委員会に提出しました。入札予定価格漏えいという、法にもふれる行為と知りながら、隠しつづけてきたのです。
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「ムネオ・ハウス」入札介入疑惑が決定的になるなかで、小泉純一郎首相は二十二日、川口外相と外務省の竹内行夫事務次官に「遅くとも十日以内、できればもっと早く報告しなさい」と指示しました。
しかし、外務省は鈴木氏の無理難題に唯々諾々(いいだくだく)と従い、公正であるべき入札をねじまげた一方の当事者です。「外務省こそ『ムネオ・ハウス』」といわれるほどです。
いわば「共犯者」に「調査」をまかせて、真相解明をはかるなどというのは、機密費疑惑の前例にもあるように、どだい無理な話です。
しかも、小泉首相は鈴木氏らの参考人質疑がおこなわれた二十日夜、自民党の山崎拓幹事長ら幹部と会談し、予算の「年度内成立に全力をつくしてほしい」と指示し、鈴木氏の証人喚問には応じないことを確認しています。
ことは、族議員と呼ばれる一国会議員が、外務省支配を通じて、国民の税金をつかった事業を私物化していた、政治の根本が問われる問題です。
首相が「改革」をいうなら、調査は外務省任せで、国会での真相究明は打ち切りという態度は許されません。
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