2002年3月4日(月)「しんぶん赤旗」
「救急車で病院に運ばれ一カ月入院した人から『国保証がなく、百万円以上請求されたが払えず困っている』という相談を受けた」。日本共産党の浅名勝次埼玉県蕨市議からこんな連絡が入りました。命にかかわる深刻な事態を各地で引き起こしている国民健康保険証の取り上げ。相談した南里陽子さん(60)のアパートを、浅名市議とともに訪ねました。(内藤真己子記者)
「まさか、こんなことになるとは思ってもみなかったんです…」。同市内で小さな居酒屋を営んでいた南里さんは、病み上がりの青白い顔色で、この間の事情を語りました。
一人ぐらしの南里さんが急な体の変調を覚えたのは昨年十二月二十二日の朝。吐き気がして、起きあがれず救急車で隣接する川口市の病院に運ばれました。
脳こうそくと診断され緊急入院。しかし保険証はありませんでした。
店は不況でお客が減り、店の経費の支払いを済ませると手元に残るのは月二万円程度。「店の残り物で済ませ、食費を浮かしていたからやってこれた」ものの、年三万二千円の国保税は払えず滞納。昨年十月、市に国保証を取り上げられました。
小泉首相が厚生大臣だった九七年、政府が国保法を改悪し、災害などの「特別の事情」以外で一年間国保税を納めなかった世帯から保険証を取り上げることを市町村に義務付けたためです。
保険証が取り上げられると資格証明書が発行され、かかった医療費の全額をいったん病院の会計窓口で支払わなければなりません。
南里さんは一月末まで入院。退院時の請求額は百十六万円でした。「こんなにかかるとは思ってなかった。請求書を見てびっくりしました」
資格証明書の場合、市に請求するとあとから保険給付分を返してもらうことができます。しかし貯金も底をついていた南里さんは、病院で百十六万円もの大金を払うことはできませんでした。
支払いを待ってもらうよう病院に頼んで退院。「いざというとき、駆け込めば助けてくれる」とお客から評判を聞いていた浅名市議を訪ねました。
浅名市議に勧められて南里さんは生活保護を申請。入院費の支払いについても市と交渉中です。
南里さんは「途方に暮れましたが、浅名さんに救われました。もう私のような人が出ないようにしてほしい」と語ります。
浅名市議は訴えます。
「保険証取り上げが命にかかわる重大な問題を引き起こすことは、南里さんの例で明らかです。市は保険証取り上げをただちにやめるべきです」
中央社会保障推進協議会の調査によれば、保険証取り上げにともなう資格証明書の発行は全国で十七万九千世帯にのぼります。
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