2002年3月8日(金)「しんぶん赤旗」
六日の衆院本会議で、日本共産党を代表して穀田恵二国対委員長がおこなった、野党四党共同提出の組み替え動議に賛成し、二〇〇二年度政府予算三案に反対する討論の大要を紹介します。
まず初めに、わが国の外交を歪(ゆが)め、行政を私物化する鈴木宗男議員による数々の疑惑が明らかになり、政府の予算執行の資格が厳しく問われていることを指摘しなければなりません。にもかかわらず、疑惑の徹底解明を後回しにしたまま、深刻な経済危機をさらに推し進める予算案の衆院通過を強行しようとしていることに対し、満身の怒りを込めて抗議の意思を表明するものであります。
アフガン復興会議へのNGO排除問題での不当な圧力をはじめ、鈴木議員による行政私物化の実態は、ゆるすことのできないものです。わが党の佐々木憲昭議員が明らかにした「ムネオ・ハウス」など「北方四島支援」事業への不当な介入と私物化、コンゴ民主共和国臨時代理大使に対する外交官身分証明票発給の妨害という他国の主権に介入し、日本の外交を歪めた事実などは、外務省のおこなった不十分な調査でも認めざるを得ないものでした。鈴木疑惑の解明は緒についたばかりであり、疑惑はますます深まりと広がりを見せているのであります。
現に、昨日、本日の予算委員会での審議を通じて、国土交通省をめぐる疑惑、防衛庁をめぐる疑惑など、疑惑は政府全体に広がっているのであります。
これらの疑惑は日本の外交政策、予算の執行にかかわる重大問題であります。だからこそ、本日の予算委員会で塩川財務大臣も、このままの形では予算の執行はできないと答弁したではありませんか。疑惑の全容解明がないまま、予算案採決を強行することに一片の道理もないのであります。
「政・官・業」の癒着をめぐって、解明すべきはこれだけではありません。自民党加藤紘一元幹事長の秘書や鹿野道彦議員の元秘書による公共事業への「口利き」疑惑、一連の疑惑を徹底解明し、「政・官・業」の癒着を元から断つことこそ、いま国会に求められています。
次に、本予算案の中身の問題です。
なによりも本予算案は、長引く不況と「デフレ」を解決し、国民の暮らしを応援する内容にまったくなっていないのであります。そもそも本予算案を提出した折、「デフレ対策を組み込んだ最適な予算」と豪語していたにもかかわらず、予算案審議の最中に「デフレ対策」を出さざるをえませんでした。このこと自体、「欠陥予算」であることを政府みずから告白しているものです。まったくつじつまが合わないではありませんか。
小泉内閣が発足して十カ月。この間、失業率は過去最高の水準にあり、企業倒産も相次いでいます。わが党の追及で、信金・信組を無理やりつぶす金融庁の理不尽なやり方が明らかになりました。小泉内閣は、「不良債権の早期最終処理」の名のもとに中小零細業者をつぶし、地域金融を支えている信金・信組を、手段を選ばず強制的に破たんさせてきました。その一方で大企業や大手銀行には手厚い「支援」を一貫して続けています。まさに弱きをくじき、強きを助けるのが小泉「構造改革」であります。
来年度予算案には、その必要性が疑われ、「壮大な浪費」とまでいわれている川辺川ダム、関空第二期工事、諌早湾干拓など大型プロジェクトは依然として温存されています。また、大銀行支援のための公的資金枠七十兆円も維持され、さらなる投入の動きさえ見られるのであります。
歴代の自民党政府がおこなってきた「景気対策」の結果、一九九〇年から二〇〇一年までの十一年間で、サラリーマン世帯の消費支出はマイナス5・1%、月額で一万八千円余りも落ち込んでいることにみられるように、深刻な経済危機の根本には消費大不況があることはあまりにも明白であります。
多くの国民が「痛み」を押し付けられているうえ、不況で苦しむ人々にいっそうのしわよせを迫る、それが本予算案の特徴です。サラリーマンなどの医療機関の窓口での自己負担を三割に、高齢者の負担限度をも引き上げる医療制度の改悪、高齢者マル優の廃止、中小企業予算のさらなる削減、日本育英会奨学金の無利子貸与枠の大幅削減、これらは庶民の暮らしと営業を破壊し、景気と経済をさらに悪化させるもの以外何ものでもありません。焦眉(しょうび)となっているBSE問題でも、まともな対策予算もないではありませんか。すでに破たんした大企業中心の経済政策をさらに徹底して推し進めるやり方であり、いまや経済危機の最大の原因は小泉「構造改革」そのものなのであります。
いま求められていることは、小泉「構造改革」をきっぱりやめ、大企業のリストラを規制して雇用を守る、医療・年金・介護など社会保障の改悪を中止すること。経済運営の軸足を国民のくらしと営業に置く方向に転換することです。こうした国民生活を応援する予算への転換以外に、GDPの六割を占める家計消費をあたため、現在の経済危機から抜け出す道はありません。
日本共産党は、そのための「予算案の抜本的な組み替え要求」を提案し、その実行を求めてきました。過去最悪の雇用情勢に対応するため、解雇規制法や地域経済に打撃を与える一方的な工場閉鎖などを規制するための立法措置など大企業の社会的責任を明確にすること。本人三割負担はただちにやめ、国の財政支出を最優先にした医療保険財政を立て直すこと。銀行への公的資金投入を中止し中小企業を支援すること。公共事業の浪費をなくすうえでは、ゼネコン奉仕の大型公共事業から生活改善型の公共事業への予算配分の転換が不可欠です。
わが党は、こうした抜本的転換の方向を掲げるとともに、野党四党で一致する最低限の予算組み替えも要求してきました。
こうした提案にさえ真摯(しんし)に耳を傾けない政府・与党の態度は、国民の願いを真っ向から踏みにじるものと言わなければなりません。
自民党政治のゆきづまりはいよいよ深刻です。小泉「改革」の正体は、旧来の自民党政治と何ら変わらないこと、自民党政治をよりむきだしにしたものであることが、白日のもとにさらけ出されており、その転換が求められています。「政・官・業」の癒着を元から断つこと、憲法で保障された人間を人間として大切にする経済社会をめざすこと、有事法制やテロ対策と称した報復戦争への無条件の協力ではなく、世界に誇るべき平和憲法を政治の根本にすえること、二十一世紀の日本の進路が厳しく問われています。日本共産党は、憲法を政治に生かすため、国民と力をあわせ、全力をあげることを表明し、討論を終わります。
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