2002年3月9日(土)「しんぶん赤旗」
「自分がかかわった、ありとあらゆることを利権にしている」――日本共産党の筆坂秀世書記局長代行が八日の参院予算委員会でおこなった質問は、鈴木宗男・自民党衆院議員の疑惑が、防衛庁や外務省など多くの省にわたるだけでなく、その介入の深さでも異常な問題があることを明らかにしました。
「それは根室管内だろう」という自民党・鈴木宗男衆院議員の圧力で、「ムネオ・ハウス」(国後島緊急避難所兼宿泊施設)の受注が、根室管内の同氏の後援企業に回るよう仕組まれた問題をめぐり、日本共産党の筆坂秀世書記局長代行は、八日の参院予算委員会で新たな疑惑を明らかにしました。
九九年六月に行われた入札説明会参加六社のうち、入札参加資格があったのは、実際に受注した犬飼工務店、渡辺建設工業の二社のみ。「一般競争入札にみせかけるために、参加資格がない者を四社入れ込んだ。まさに偽装工作ではないか」(筆坂氏)という疑惑です。
「ムネオ・ハウス」の入札参加資格は、説明会に参加し、(1)北海道内に本社を有する者(2)根室管内で類似施設建設工事の施工実績を十分に有する者などとなっていました。
筆坂氏の追及に、外務省の斎藤泰雄欧州局長は、説明会参加六社のうち、入札参加資格があったのは、犬飼工務店と渡辺建設工業の二社以外に、「山九」「第一土建工業」「村井建設」と説明しました。
ところが、筆坂氏は、「山九」は本社が東京にあり、入札参加資格はないと指摘。「第一土建工業」は施工実績不足で、「村井建設」も根室管内での受注実績がなく、いずれも参加資格をもたないことを明らかにしました。
筆坂氏は、外務省の調査報告書(四日)でも、入札参加資格を有する企業は、受注二社以外に三社あったとする記述を指摘し、「外務省の報告は、そこをまったく解明していない。偽装報告ではないか」と調査のずさんさを批判。「ただちに再調査し、国会に報告するのが当然だ」と要求しました。
斎藤局長は「事実関係に誤認があれば、たいへん遺憾なことだ」と答弁。川口順子外相は「新しく指摘があった分は、また調べる」と再調査を約束しました。
外務省・支援委員会と「天上がり」「天下り」で結びついた商社が「北方四島」やロシアの支援事業を受注し、自民党に十一年間で二十一億円以上の政治献金をしていた――。筆坂氏は、こうした事実を明らかにしました。
ロシアには、支援委員会の出先機関である「日本センター」が七カ所あります。筆坂氏は、七つのセンターの所長がすべて民間企業の出身者であり、そのうち六つは商社からの「天上がり」であることを指摘。「実態は“日本商社センター”だ」と批判しました。
筆坂氏は、外務省からこれらの商社へ多数の官僚が天下りしている実態(表上)を示しました。同時に、天下った年やその前後に、択捉(えとろふ)島へのディーゼル燃料(九三年、住友商事)や、色丹(しこたん)島の発電施設(九九年、三井物産)など、「北方四島支援事業」や「ロシア支援事業」を受注していることを指摘。小泉純一郎首相に「支援委員会・外務省と商社のこの関係を、正常な関係だと思うか」とただしました。
小泉首相は、「よく調査して、疑惑のないようにしなくてはいけない」とのべました。
筆坂氏は、これらの商社から自民党の政治資金団体である「国民政治協会」に対し、「ロシア支援」が始まった一九九〇年からの十一年間で二十一億千九百三万円もの政治献金があった(表下)ことを指摘。「こういう企業と結びついて巨額の企業献金を受け取る。これは鈴木議員と同時に、自民党政治全体が見直すべき問題だ」と迫りました。
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筆坂氏は、一九九七年から北海道・矢臼別演習場で始まった米海兵隊の実弾砲撃演習に、鈴木氏が介在していた問題についてただしました。
六日の衆院予算委では日本共産党の佐々木憲昭議員が防衛施設庁の内部文書を示し、実弾演習にかかわる宿泊施設や物品調達業者について、同庁が鈴木氏に詳細な事前説明をしたことを明らかにしています。中谷元・防衛庁長官は筆坂氏の質問に「同様の資料が確認された」とのべ、内部文書の存在を認めました。
そのうえで筆坂氏は、この問題で新たな疑惑に迫りました。
矢臼別演習場の地元である浜中、厚岸両町長は沖縄での米海兵隊の実弾演習を本土五カ所へ移転するにあたり、当初受け入れ反対を表明していました。そこへ「何が反対なのか」などとどう喝し、無理やり受け入れをのませただけでなく、海兵隊の歓送迎会まで開催したのが鈴木氏でした。
筆坂氏は、「なぜ鈴木氏が、ほかの演習場ではやらない歓送迎会まで行ったか。新しい利権ができると思ったからではないか」とのべ、それを裏付ける事実を示しました。
実弾演習の移転に伴い、SACO(沖縄に関する日米特別行動委員会)関連経費で、演習に必要な諸施設が矢臼別演習場に建設されました。このうち、食堂厨房(ちゅうぼう)の新設(二億三千四百六十八万円)を請け負ったのは犬飼工務店、海兵隊の隊舎新設(一億九千二百十五万円)は渡辺建設工業でした。
筆坂氏は「どこかで聞いた名前だ。『ムネオ・ハウス』を共同受注した企業二つが、大口の仕事をしっかり取っている」と指摘。さらに、SACO関連事業(防衛施設庁、別海町発注)を受注した企業二十五社が、鈴木氏に六年間で総額三千八百八万四千円という巨額の政治献金をしていることを告発しました。(表)
筆坂氏は「鈴木氏の行動を見ると、自分がかかわったあらゆるものを利権にしている政治家だと思わざるを得ない。省庁も多岐にわたる。自民党の総裁である小泉首相自身が、徹底究明に責任を持つべきだ」と主張しました。
「なぜ、鈴木議員が『北方四島』支援に熱心すぎるぐらいとりくんできたか。それ自体を食い物にする動機にとどまらない、重大な疑惑がある」
筆坂氏が根室市など現地調査もふまえて明らかにしたのは、鈴木氏が「二島先行返還」論を唱えてきた歯舞諸島と色丹島で、土地買い占めの動きが出ている問題です。
筆坂氏は、名古屋市の「広小路」という不動産会社が歯舞、色丹の元島民あてに出した、「求む 北方領土」と題する土地買い上げ申し入れの往復はがき(一九九五年十月十一日付)をパネルにして示しました。
「当社は…北方領土に関心が有り」「返還される目途も全くつかめない今、将来の夢を求め貴殿所有の土地を譲受けたく…つきましては、貴殿所有の物件所在地をお知らせ下されば、当社で譲受額を提示し、売買契約に応じたいと思います」
筆坂氏の調査の結果、「広小路」がこんな文面のはがきだけでなく、元島民に電話もかけて土地買い上げの打診をしていることが判明。しかし、同社の実態といえば、一九九七年から九八年の賃貸取り扱いはゼロ。宅地・建物の仲介実績はわずか七件で赤字経営となっており、「とても歯舞、色丹の土地を買いあさろうという会社ではない」(筆坂氏)のです。
一方、筆坂氏は、歯舞諸島の旧島民への聞き取り調査のなかで、「三年前、ある人物から電話があり、『鈴木宗男さんが島の土地をほしがっている。買いたいといっているので、だれか売る人はいないか』という話だった」と証言したことを紹介。この元島民のもとには今年三月にも「鈴木さんから土地を売ってくれといわれている」と電話があったことから、釧路市の鈴木宗男事務所にその人物の名前を出して抗議すると、電話をかけた人物を知っている対応をし、否定しなかった事実をあげました。
これに対し小泉純一郎首相は、「いまはじめて知った。奇怪な行動だ」と答えました。
筆坂氏は、「領土問題は、日ロ間にまたがる最大の外交案件だ。それに政治家まで絡むのなら外交上の許されない問題だ」と強調。そのうえで、今回の土地買いあさりの対象は、歯舞諸島、色丹島だけで、国後、択捉は入っていないことを指摘しました。
筆坂氏は、「二島先行返還」論について日ロ領土交渉担当者が「日ソ共同宣言から交渉を始めるというなら、二島返還が最終決着になる」(ロシアのロシュコフ外務次官)、「二島返還・二島継続という案には大きな難点があって、事実上、二島返還と同じ」(東郷和彦オランダ大使)と明言していることをあげ、鈴木氏のいう「二島先行返還」は二島のみ返還だというのがその実質だと批判。
土地買いあさりの背景に鈴木議員らが唱える「二島先行返還」論があるといわざるをえないと強調し、徹底的な調査を求めました。
これに対し小泉首相は、こうした動きは「好ましくない」と答えました。
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