日本共産党

2002年3月21日(木)「しんぶん赤旗」

有事立法

首相に権限集中、国会を排除

“超憲法的”に自治体、民間動員


 自民、公明、保守の与党三党に対する二十日の政府説明で、今国会提出の有事立法の骨格が、ほぼ明らかになりました。

 その特徴は、首相を頂点に国会を排除し、地方自治体や民間まで動員できるようにする“超憲法”的仕組みがうきぼりになったことです。

 日本が武力攻撃を受けた事態(武力攻撃事態)にたいする対処の基本方針は国会にもはかられず、首相を議長とする安全保障会議の審議・決定をへて、閣議で決定するとしています。そのうえ、国の行政機関や地方自治体との「総合調整」機関として設置される「対策本部」の長も首相が務めます。

指示命令の関係

 しかも、説明文書によれば「対策本部」の「総合調整の実効性を高めるため」に、国の各省庁、地方自治体などに対し「行使し得る権限等」を法案に盛りこむとしています。与党にたいする説明では、この「権限」として首相による地方自治体への「指示」権を検討するとしており、本来、上下関係にない国と地方自治体の間に、指示命令関係を持ちこもうとしています。地方自治体を戦争体制に組み込むために、首相の権限を拡大しようというねらいは明らかです。

 これまで首相や外相、財務相、官房長官、防衛庁長官などで構成され、「防衛計画の大綱」の決定などをおこなってきた安保会議の機能強化も狙っており、補佐組織をおくことが検討されています。

 首相に権限を集中した国の戦争体制をつくると同時に、国民の強制動員の狙いも明確です。防衛庁が示した自衛隊法改悪案の検討事項では「物資の保管命令に従わない者等に対する罰則規定の整備」を盛りこんでいます。

罰則広げる狙い

 これまでの有事法制研究では「物資の保管命令に従わない者に対する罰則の検討」が明記されていましたが、今回の改悪案では、「等」をもぐりこませました。罰則の対象を戦争動員(従事命令)に従わない者など戦争協力を拒否する広範な民間人に広げる狙いもうかがえます。

 与党側からは、民間人への罰則規定について「慎重に」という意見が出たものの、罰則そのものは「法律をつくる以上無理からぬ部分がある」(公明党・冬柴鉄三幹事長)と理解を示しました。

 その一方で政府・与党はなぜいま有事立法が必要なのかの説明を何一つおこないませんでした。有事立法が想定する「武力攻撃事態」なるものの想定について記者団に問われた自民党の山崎拓幹事長は、「領土、領海、領空が侵略される事態」とのべるだけ。しかし、日本に他国が侵略してくる事態は、元自衛隊幹部でさえ「ばかげたこと」と一笑に付すほどのことです。

 結局、米軍がアジア太平洋地域で軍事干渉をおこした場合に日本が参戦することを想定しつつ、「日本有事」を口実に地方自治体、民間を罰則つきで戦争体制に組み込む体制づくりが狙われているのです。(田中一郎記者)

 


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