2002年3月24日(日)「しんぶん赤旗」
政府が四月十日までの今国会提出を目指し、準備をすすめる有事立法。戦時に米軍や自衛隊の活動を最優先にするために、国民の権利を奪い、首相への権限集中をねらうものです。政府・与党は「憲法の枠内」と強調しますが、推進派の立場からも「憲法に根拠なし」を認めざるをえない発言があがっています。
「憲法には危機管理条項がない。だから(安全保障)基本法がつくれない。それがつくれないのに本来、有事法制がつくれるはずがないんです」
三月上旬、内閣官房や防衛庁の関係者、マスコミなど約百人ほどが集まって開かれたシンポジウム。パネリストの陸上自衛隊・元北部方面総監の志方俊之氏はこうのべて、有事立法をつくる根拠となる規定が憲法にないことをくやしがりました。
志方氏は、有事立法制定を推進する立場。しかし、憲法に根拠のない法律をつくろうとする政府与党の無法ぶりは、認めざるをえません。
西元徹也元統幕議長は「(憲法論議と切り離すべきでないとの意見に)究極のところは、私もそうだと思う。だが、憲法改正には、5年や10年はかかる」(「朝日」八日付)とし、憲法への抵触を承知の上で、「今逃すと忘れ去られる」(同)とのべています。
かつての侵略戦争の反省から生まれた日本国憲法は、戦争放棄を掲げており、戦争協力しない民間人を処罰する有事立法の成り立つ余地など、どこにもありません。
ところが、自民党の山崎拓幹事長は、「有事」の国民の権利制限は「全体の利益を守るためにはやむをえない」(二月五日)と主張しています。
公明党の冬柴鉄三幹事長も、憲法の条文にある「公共の福祉」規定をあげて、民間人への罰則規定は「無理からぬ部分もある」とのべています(二十日)。
しかし、憲法の「公共の福祉」規定を口実にする主張に無理があることは、自民党が改憲をねらって内閣につくった憲法調査会(五七年発足)の議論でも明らかです。
調査会報告書(六四年)は、「公共の福祉」規定を拡大解釈する主張に「反対する意見が多い」と指摘。「憲法外の国家緊急権の行使を認めることは、憲法の破壊」との意見も紹介しています。
報告書起草にあたり十七人の委員が出した共同意見書は、「公共の福祉」規定の拡大解釈について、「政府はこれを利用して『公共の福祉』を無限大に解釈して基本的人権を勝手に制限する可能性すらある」とまで批判しています。
いずれも「だから、改憲しろ」と主張しているわけですが、彼らから見ても、平和憲法のもとでの有事立法制定が、いかに憲法無視のものかを認めざるえないのです。
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