2002年4月3日(水)「しんぶん赤旗」
BSE問題に関する調査検討委員会の高橋正郎委員長(左)から最終報告書を受け取る武部勤農水相(右)と坂口力厚生労働相(中央)=2日午後、東京・霞が関の農水省 |
「政治の責任は避けて通れない」。BSE(狂牛病)対策の行政責任を「重大な失政」と批判した最終報告書(二日)をまとめたBSE問題調査検討委員会の席上、委員の一人からこんな発言が飛び出しました。
同委員は、WHO勧告を完全実施しないで肉骨粉使用禁止を先送りし、昨年九月の日本初のBSE感染牛発生を招いた農水省にたいして、「調査を通じて、政治の責任の思いが伝わってこない」とも指摘しました。
最終報告は、WHO勧告実施を行政指導ですませた「意思決定は、農林水産省のどの部署で、いかなる人が、どんな協議をおこなって決定したのか。本調査委員会の質問にも役所側からの説明はほとんどなく」「きわめて不透明である」と指摘。「政と官の関係が政策決定の不透明性を助長」していると、農水省と農林関係議員との「政官癒着」が政策をゆがめた弊害を指摘しました。
BSE感染牛発生後でも、自民党のBSE対策本部で、議員からの“圧力”で政府の当初方針が少なくとも二度覆されています。
最初は、全頭検査の結果公表時期を「簡易検査時」としていた厚労省案が「確定診断後」に改められました。
二度目では、渋る農水省が押し切られ、全頭検査以前に処理された国産牛肉を国が買い上げ、焼却処分することが決まりました。
自民党の農林水産関係の部会では、国会議員から省庁幹部への怒号が鳴り響くのは珍しくないといいます。
検討委の議論の中では、BSE専門家から「政治家から科学的な知見に対しても注文があった。大変問題だ」との意見も飛び出しました。
検討委は農水省と自民党農水族との関係について、報告で固有名詞を挙げて言及することは避けましたが、農水省の方針が、業界と結びついた族議員の意向次第で大きく左右されてきた現状に「ノー」を突き付けた格好です。