日本共産党

2002年4月9日(火)「しんぶん赤旗」

有事3法要綱案

米軍・自衛隊を全面支援


 政府が八日、与党三党に示した有事関連三法案要綱案は、自衛隊だけでなく米軍に対しても、国民をあげて全面的に戦争協力を強いられるという違憲の性格をいっそう浮かび上がらせました。

物品や施設、役務の提供など全面的に

 要綱案では、「武力攻撃事態」がおきたときの措置(対処措置)に、自衛隊と米軍が「円滑かつ効果的に」軍事作戦をおこなうための「物品、施設又は役務の提供その他の措置」をあげました。自衛隊だけでなく、国や地方自治体、指定公共機関に米軍、自衛隊への全面的な後方支援をおこなわせることを可能にするものです。

 指定公共機関には、マスコミであるNHKをはじめ、独立行政法人、日本銀行、日本赤十字社、電気・ガス・輸送・通信の各事業者を明記しています。国民生活に関連するあらゆる分野が含まれています。

 有事関連法案が想定する「武力攻撃事態」なる事態には、米国がアジア太平洋地域に軍事介入する「周辺事態」が含まれます。中谷元・防衛庁長官も「当然、一つのケース」(四日の衆院安保委員会)と明確にのべています。

 日本防衛と関係のない「米軍有事」での自衛隊と米軍の軍事作戦に、国が「組織及び権能のすべてを挙げて」(要綱案)支援するだけでなく、地方自治体、民間事業者と労働者も戦争協力が強いられることになるのです。

「自由と権利」の全面的な制限可能

 さらに重大な特徴は、「基本理念」の中で、「日本国憲法の保障する国民の自由と権利」に「制限が加えられる場合」をあげていることです。

 国民の基本的人権は「侵すことのできない永久の権利」で、恣意(しい)的に制限することは許されません。要綱案は、「必要最小限」とか「公正かつ適正な手続」などといっていますが、憲法が保障する「自由と権利」の全面的な制限を可能とするものです。

 自衛隊法改悪案の要綱案では、国民や会社の持つ物資を自衛隊が使うために命じる「保管命令」に違反した国民に、六カ月以下の懲役または三十万円以下の罰金を強いる規定が盛りこまれています。

指示・執行権など首相に権限集中

 「武力攻撃事態」において、首相に巨大な権限が集中することも、改めて明らかになりました。

 対処基本方針を安全保障会議に諮問するのは首相。その安保会議の議長も首相。安保会議と閣議で決定した対処基本方針にもとづきおこなわれる「対処措置の実施を推進する」対策本部の本部長も首相――。

 要綱案は、「内閣総理大臣の権限」の項目をおこし、自治体や指定公共機関に対する「指示」権を明記。それが実施されない場合と「緊急」の場合には、有無を言わせず首相が執行する権限も書きこまれました。

 「現地対策本部」が設けられた場合、この絶大な首相の権限の一部を移す規定も初めて盛りこまれました。

 要綱案は、米軍の戦争に、首相の“非常大権”の下で、国、地方自治体、指定公共機関まで動員するという危険な性格が、いよいよはっきり現れたといえます。

 (田中一郎記者)

 


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