2002年4月17日(水)「しんぶん赤旗」
小泉内閣が、有事立法の三法案を閣議決定しました。
法案は、「武力攻撃事態」に際し、「自由と権利」の制限、国民の「必要な協力」を明記しています。国民から基本的人権を奪い、戦争協力を義務づけるなど、国民を戦争に強制動員する戦争国家法案です。
歴代自民党政府は、これまでも有事立法を策動してきましたが、実際に国会に法案を提出するのは、今回が初めてです。
小泉内閣は、これを今国会で一気に強行しようとしており、事態は緊迫しています。
法案は、土地、家屋などの使用や医療、運輸、土木・建築従事者の動員などとともに、放送、電気、ガス、輸送、通信など各機関・業種の協力を義務づけています。
物資の保管命令や立ち入り検査は罰則つきで強制され、非協力者は逮捕され犯罪人にされかねません。
法案は、戦争協力を国民に強制するため、首相が都道府県知事に指示し、首相自ら実施させることもできるとしています。
まさに、憲法の規定を踏みにじり、日本が戦争することを最優先にする国に変える戦争国家法案です。
首相は「備えあれば憂いなし」といいますが、日本が近隣諸国から武力攻撃を受ける可能性がないことは、政府も国会で答弁しています。
小泉首相が、有事立法を推進するために、テロや不審船をもちだし、戦争がいまにも起きるかのようにいわざるを得ないのもそのためです。
テロの発生や不審船の侵入を防ぐのは、警察や海上保安庁の仕事であり、これを口実に有事立法の正当化を図るのは筋違いです。かつて侵略戦争を起こした日本が軍事力で対応すれば、日本への警戒をかきたてアジアの緊張を高めるだけです。
日本が他国から直接攻撃をうける事態を到底想定できないのに、なぜこんな法案を急ぐのか。アメリカのアジアでの無謀な戦争に協力するためにほかなりません。
そのことは、法案が、日本が攻撃されなくても、アジアのどこかで米軍が戦争を始め自衛隊が後方支援しただけで発動される仕掛けになっていることに端的に示されています。
防衛庁長官は国会答弁で、有事立法が発動されるケースの一つとして「周辺事態」をあげています。
法案の「武力攻撃事態」には、武力攻撃が「予測されるに至った事態」が含まれています。米軍が戦争を始めた「周辺事態」で、首相が「攻撃が予測される」といえば、有事立法を発動できるのです。
有事立法は、米軍の戦争への参戦に「備え」て、国民を動員する法律をつくっておこうというものです。
国民を強制動員する点でも、国の仕組みを変える点でも、戦争を最優先にする体制を平時からつくるところに、法案の眼目があります。
自民党政府の有事立法策動はこれまで何回も失敗してきました。それは、国民が「外国の攻撃に備える」という口実が成り立たないことを知っており猛反対したからです。
米ソ対立が激しかった時でもそうなのに、まして、アジアの平和の流れが大きくなっている今どき、有事立法を持ち出してきた小泉内閣や与党の時代錯誤は明らかです。
日本を二度と戦争を起こす国にしないと誓い、国民の自由、人権が大切にされる社会をつくってきた国民の力で、小泉内閣の有事立法策動をうちくだこうではありませんか。