2002年4月19日(金)「しんぶん赤旗」
「なんだ、これは」。三月上旬、陸上自衛隊北部方面総監部から送られてきたファクスをみて、安保破棄・諸要求貫徹北海道実行委員会の山下忠孝事務局長は声をあげました。
山下氏の請求で送られてきた文書の、六カ所が黒塗りになっていたからです。文書は東ティモールPKO活動への出発予定を記したもの。黒塗り部分は、参加部隊の車両を大型輸送艦「おおすみ」に搭載する予定時間と出港予定時間でした。
なぜ、黒塗りなのか。北部方面総監部広報室は「理由はない」といいます。しかし、実はマスコミに報道しないよう“縛り”をかけた部分だったのです。
アフガン戦争をたたかう米軍を支援するとしてインド洋に派遣された自衛隊艦隊の行動も隠密です。防衛庁は「補給をする場所、寄港地、作戦の詳しい内容についてはいっさい公表していない」としています。寄港地にいたっては「公表しない理由も公表しない」といいます。「産経」は現地ルポを掲載しながら、場所は「アラビア海北部の港」などとするだけで寄港地はもちろん、国名さえ報道していません。
米軍の安全を優先
その大本にあるのは「有事」体制下の米軍です。
米同時多発テロ後の昨年十月三日。東京・港区にあるニューサンノー米軍センターで在日米軍司令部広報部長が日本の大手新聞社、テレビ、通信社の記者約二十人を前に要請をおこないました。
要請内容は(1)米軍艦船、航空機の出入りなどは発表できなくなる(2)米軍人への直接取材の内容は伏せてほしい(3)基地の警戒レベルは報道しないでほしい――というものでした。
実際、テロ後、米軍は二十四時間前に関係自治体に通報してきた原子力艦船の寄港情報を事前公開しないよう外務省に要請。同省は「米軍は安全の維持上、非公開の維持を必要としている」として事前非公開を続けています。
米軍や自衛隊の行動を最高度の機密とし、国民の知る権利や住民の安全より優先させる――。「戦争国家法案」にも共通する根本思想です。
消える報道の自由
そのうえ、「戦争国家法案」が現実となれば、どうなるか。報道管制は「要請」ではすまなくなり、「報道の自由」は消えてしまいます。
法案では、首相の統制下におかれたうえ、戦争協力が「責務」となる「指定公共機関」にNHKが名指しされています。災害時のNHK「防災業務計画」をみると次のようになっています。
「災害における放送番組は…警戒放送、災害関係の情報、警報、注意報、ニュースおよび告知事項、災害防御または災害対策のための解説・キャンペイン番組等、有効適切な関連番組を機動的に編成し…」
これを「有事」におきかえるとどうなるか――。太平洋戦争中、ウソの戦果を流し、国民から戦争の実態を覆い隠した天皇直属の最高戦争指導会議――「大本営発表」報道。偽りの報道で国民が知らぬ間に戦争に動員される日が来ないとも限りません。(つづく)