2002年4月20日(土)「しんぶん赤旗」
秘書の口利き疑惑で責任を問われていた井上裕参院議長は十九日午後、本岡昭次副議長に辞表を提出しました。辞任の理由はまったく明らかにしませんでした。参院議長の任期途中の辞任は、二〇〇〇年十月の斎藤十朗氏以来のことで、本人や秘書の疑惑をめぐって辞任した例は初めてです。
井上議長は十八日、政策秘書が公共事業の口利きの見返りに建設業者から六千四百万円を受け取った疑惑について、与野党各派の代表者に説明しました。しかし、野党側は「疑惑はいっそう深まった」として政策秘書と建設業者の証人喚問を要求。疑惑が深まった議長のもとでの本会議開会は認められないとして、十九日午前の参院議院運営委員会理事会を欠席し、本会議開会は見送られました。
小泉純一郎首相は、自民党の青木幹雄参院幹事長と議長の進退問題を協議した席上、「参院のことなので任せる」と対応を青木氏に一任。その後、井上議長は辞表を提出しました。
辞表提出を受けて開かれた参院議運委理事会では、二十二日午後一時半から本会議を開会し、井上議長の辞職承認と新たな議長選出のための選挙をおこなうことを決めました。
日本共産党の志位和夫委員長は十九日午後、国会内で、井上裕参院議長が辞任表明したことについて記者団に問われ、「議長の辞任は当然だが、国民に対して真相を明らかにする責任をまったく果たしていない」と述べ、疑惑が指摘されている秘書と、建設業者の証人喚問の必要があると強調しました。
辞任表明にいたる与党の対応について志位氏は、「自浄作用を発揮する態度がない」と批判しました。
志位氏は、「三権の長の一人が、公共事業の口利きの関与という深刻な疑惑を明らかにしないまま辞める事態になった。ことは院の権威にかかわる問題であり、国民の政治に対する信頼を回復するためには、中途半端でない対応をする必要がある」と述べました。