2002年4月20日(土)「しんぶん赤旗」
公共工事の受注にからんだ政策秘書の口利き疑惑で井上裕参院議長が辞表を提出しました。国権の最高機関の長にあるまじき疑惑であり、辞任は当然です。
しかし、「国会運営の混乱の責任を取る」という常とう句を繰り返すだけで、何ら疑惑を解明しないまま幕引きを図ることは許されません。
週刊誌報道に端を発した疑惑は、井上議長の政策秘書が、口利きで公共工事を受注させた千葉県の建設会社から、見返りとして六千四百万円を受け取っていたというものです。
昨年九月、この建設会社の元社長から口利き料の全額返還を要求され、政策秘書はそのうち一千万円を返却したと報じられています。元社長は、政策秘書を信じたのは「井上議長も承知しているといわれたからだ」とのべています。
一方、井上議長は十八日、参院の与野党各派に事情を説明し、「私とはまったく関係なく行われたもの」だと関与を全面的に否定しました。この秘書が受け取ったのは「パーティー券代一千万円のみ」で、「六千四百万円など天地神明に誓って受け取ったことはない」といいます。
返却したとされる一千万円については、元社長から恐喝を受け、脅し取られたものだとのべました。同秘書は元社長を刑事告発しています。
井上議長の説明で、むしろ疑惑はいっそう深まりました。
なぜ元社長は一千万円も出してパーティー券を買ったのか。公共事業の受注をめぐる深いかかわりがあったからではないのか。
なぜ秘書は脅されるままにカネを払ったのか。やすやすと一千万円を脅し取られたのは、弱みがあったからではないのか。議長は肝心の問題をまったく説明していないのです。
元社長は秘書とのやりとりを録音したテープを持ち出して「証言」しています。議長自身が認めた「一千万円のパーティー券購入」だけでも、公共事業にかかわる利権と腐敗の関係をうかがわせるものです。
事は一議員の政治力を利用した口利き疑惑にとどまらず、三権の長である参院議長の権威を背景にした疑惑であり、参議院の権威にかけてもあいまいな決着は認められません。
なにより、日本共産党など参院の野党四会派が要求しているように、真っ向から言い分が食い違っている政策秘書と元社長を証人として喚問し、真実を明らかにすることが不可欠です。
小泉首相は議長辞任について、「(法案審議へ)影響がないよう努力しないといけない」とあけすけに語っています。
議長問題に早くけりをつけ、「戦争国家法案」(武力攻撃事態法など有事三法案)や医療制度の大改悪など、国民のくらしと日本の進路を脅かす反動諸法案を今国会で一気に強行するために、審議日程への影響を避けたいという党略的思惑ばかりが目立ちます。
自民、公明など与党が、議長辞任をもって一件落着とし、疑惑解明にフタをするなら、院の権威をいっそう傷つけることになります。
井上議長の疑惑をはじめ、加藤・鈴木疑惑、さらには首相官邸を直撃する官房機密費疑惑など、税金に寄生しカネと利権で政治を動かす醜悪な自民党政治の破たんは明白です。
小泉政権と自民党に、もはや重大疑惑を解明する意思も能力もない以上、国会と国民が力を合わせて疑惑の徹底糾明をすすめる以外にありません。