2002年4月21日(日)「しんぶん赤旗」
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米国が戦争をおこした場合の国民総動員計画づくりが、国民に隠れて静かに進行していた――。
二月二十七日、ブレア米太平洋軍司令官が米下院国際関係委員会東アジア太平洋小委員会でおこなった次の証言から明らかになりました。
「日米は九七年のガイドライン(=日米軍事協力の指針)にもとづく最初の共同作戦計画に署名した。それは米軍の作戦に対するさらなる日本の支援を具体化するもので、防衛協力の新しい領域をひらいた」
日米ガイドラインでは、「日本に対する武力攻撃に際しての共同作戦計画」と「周辺事態に際しての相互協力計画」を検討することになっていました。九八年三月からこの作業をしていた日米共同計画検討委員会(BPC)で、これらの戦争計画の原案が合意されたのです。
中谷元・防衛庁長官も、この計画への署名が、昨年九月に自衛隊の統合幕僚会議事務局長と在日米軍副司令官との間で行われたことを認めています。
この戦争計画の中身は、国民の目からはいっさい隠されていますが、ガイドラインは「公的機関及び民間の機関による円滑かつ効果的な対応」を求めており、自治体や民間まで動員する計画であることは明らかです。政府も「必要に応じ、(自治体・民間も)対象になり得る」(野呂田芳成・防衛庁長官=当時、九九年三月八日の参院予算委員会)と認めていました。
「戦争国家法案」では、政府の戦争方針が「対処基本方針」に書き込まれますが、そこに反映される戦争計画原案はすでに完成しているのです。この計画が「戦争国家法案」によって、法的拘束力をもって動き出すことになります。
実際に政府は、米国が軍事行動をおこすことで発生する「周辺事態」でも、「戦争国家法案」が発動する仕組みをつくっています。
中谷防衛庁長官は、有事立法の発動対象について、「当然、周辺事態のケースは、この一つ」(四日、衆院安全保障委員会)と明言。自衛隊元幹部も、「わが国にある米軍基地から米軍が出撃し、『周辺事態法』にもとづき米軍を(自衛隊が)後方支援する場合に、相手国や相手の組織が攻撃してくる。これは起こりうることだ」と指摘します。
今年二月十六日から五日間、東京・市谷の防衛庁と米軍横田基地などで行われた自衛隊と米軍の日米共同統合指揮所演習。両軍の幕僚とともに、日本側は国土交通省、厚生労働省など五省庁三十六人が、「視察」を名目に初参加したことが注目されました。
厚生労働省からは、民間病院を含む医療機関、医師、看護師にかんする対策を所管している医政局指導課が参加。空港・港湾の使用など陸海空の交通にかかわる国土交通省からは十五人が参加しました。
「戦争国家法案」によって、アメリカの戦争に国民をどう強制動員するのか。政府はすでに具体的検討を始めています。(つづく)