2002年4月24日(水)「しんぶん赤旗」
「指定公共機関」。小泉内閣が閣議決定した有事三法案=「戦争国家法案」に、こんな聞きなれない言葉が入りました。
同じ言葉があるのは、災害対策基本法。日本銀行やNHKなど六十機関が指定されています。戦争国家法案では、これらの機関を戦争協力機関に変え、首相の統制下におこうとしているのです。
永野茂門・元参院議員(元陸上幕僚長)が理事長を務める日本戦略研究センターのシンポジウム(九九年十一月)で、西元徹也・元自衛隊統合幕僚会議議長は「有事」の措置にふれ、次のようにいいました。
「これらの措置について、わが国にはしっかりとしたモデルが存在する。即ち、災害対策基本法である。しかし、これを有効に動かすシステムが残念ながら確立されていない」
災害を想定してつくり上げられた災対基本法のシステムを「有事」に転用したらどうなるのか――。
同法で指定公共機関に指定されると、「防災業務計画」の策定が義務付けられます。この業務計画に災害時のシステムが細かく盛り込まれています。
たとえば、NTTグループ十二社。「各社の対策要員は非常態勢が発令された場合は、速やかに所属する対策本部等に出勤する」ことから始まり、「(電気、ガス、道路などの)ライフライン事業者と協調」して電源、燃料、輸送体制の確保に努めること、「放送事業者、防災無線運用者と協調」して「電話の自粛のお願い」などを流す措置などを決めています。
通信の非常措置では、「非常、緊急通話又は非常、緊急電報は…一般の電話又は電報に優先して取扱うこと」となっています。さらに「諸官庁等が設置する通信網との連携」や「対策本部への携帯電話の貸出し」などが目をひきます。
連載二回目で紹介したNHKの場合も、災害の「解説・キャンペイン番組」のほか、「非常災害対策本部や関係省庁等への情報提供に努める」ことが義務付けられます。
高速道路ではどうか。日本道路公団の「業務計画」では、「緊急輸送ルート」の確保を重視。「緊急輸送ルートの確保を最優先に応急措置等を実施する」ほか、「高速道路等が…緊急輸送ルート又は迂回(うかい)路に指定されたときは、これに対処すべき必要な措置を行」うことにしています。
もっとも細かく行動を規定しているのが日本赤十字社です。「職員の招集・参集」に始まり、「救護班の派遣及び輸送」「救護資機材の補充」「血液製剤の確保・供給」など十項目の業務を列挙。とくに東海地震対応では、救護班の編成順から出動準備態勢まで取り決めています。
災害では心強い措置が、「有事」に転用されれば、職員は「非常招集」され、通信や道路も米軍、自衛隊が最優先になるなど、国民の強制動員と統制につながるのです。(つづく)