2002年4月25日(木)「しんぶん赤旗」
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苫小牧市の定例議会は三月十二日、「非核平和都市条例」を全会一致で可決しました。北海道では初めて、全国でも六番目です。
条例は「非核三原則の趣旨が損なわれるおそれがあると認める事由が生じた場合は、関係機関に対し協議を求めるとともに、必要と認めるときは、適切な措置を講じるよう要請する」と明記。鳥越忠行市長は、苫小牧港に入港する外国艦船に「条例にそって、非核『神戸方式』を準用する」と議会で表明しました。
地方自治体の港湾管理権を行使して、核兵器を積んでいないという証明書を提出しない限り、外国艦船の入港を拒否するという非核「神戸方式」は、今年で二十七年目。一九七五年以来、米軍艦船は一隻も神戸港に入港していません。
ところが「戦争国家法案」が成立すると、こうした自治体独自の取り組みは破壊されかねません。
十八日の衆院安全保障委員会。日本共産党の赤嶺政賢議員が、「神戸港は非核『神戸方式』で米艦船が入港していない。地方自治体が住民の安全の見地から条例で定めたものでも、『武力攻撃事態』には首相の『指示』が及ぶのか」とただしました。政府は「迅速な対応がなければ、国の責任で『指示』の行為が行われる」と答弁しました。
「武力攻撃事態法案」は地方自治体に「必要な措置を実施する責務」があるとして、戦争協力を押しつけようとしています。首相による「指示」に強制力を与え、政府による強制執行まで認めています。「協力」の「依頼」にとどまっていた「周辺事態法」とは根本的に異なります。
港湾だけでなく、自治体がつくった病院、公共施設まで米軍や自衛隊の優先使用になりかねません。
米軍主要艦船の民間港への寄港は一九九七年から二〇〇一年までの五年間で計九十二回と常態化し、使われた港も二十八カ所にのぼります(外務省調べ)。昨年八月二十八日には、米軍第七艦隊の艦船五隻がいっせいに姫路(兵庫県)、和歌山、名古屋、清水(静岡県)の四つの民間港に入港するなど、わが物顔にふるまっています。
苫小牧港には昨年二月、第七艦隊旗艦ブルーリッジが入港を計画。今月十四日には同艦が大阪に入港しています。
非核「神戸方式」を支えてきた兵庫県原水協の梶本修史事務局長は、「『有事』になると(市が非核証明提出を求める)手続きは同じでも、国が乗り出してくることになり、地方自治体の権限である港湾管理権が及ばなくなる」と懸念を表明します。
地方自治法は「住民の福祉の増進を図ること」を自治体の責務とし、「地方公共団体の自主性及び自立性が十分に発揮されるようにしなければならない」と規定しています。
「自治体が港を管理するからこそ、市民の安全を守れる。国が軍事を優先すればないがしろにされる」(梶本さん)。いま、この不安が自治体をおおいつつあります。(つづく)