2002年4月27日(土)「しんぶん赤旗」
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昨年九月十一日の米国同時多発テロ直後のことです。
米軍横田基地へのジェット燃料輸送に携わるJR貨物の乗務員は、異変に気づきました。
いつものように横田基地に入ると、燃料の積み下ろしをする場所の手前で列車を止められました。その後、タンク車十五両編成の列車を、軍用犬を連れた米兵が、その周囲を回って警戒を始めたのです。これほどの警戒は初めて。警戒態勢は、昨年十二月まで続きました。
JR貨物のジェット燃料輸送は、横浜市の米軍鶴見貯油施設から横田基地まで。毎日一〜二回輸送しています。
国鉄労働組合の調べによると、昨年十月以降に五日間、警察官が燃料輸送の列車に乗車し警戒にあたりました。JR貨物広報は「現在はおこなっていない」としつつ、「当時、そうした警戒をしていたかは、保安上の問題があり、お答えできない」とのべ、警察官の乗車を否定しません。
米国へのテロ。そして報復戦争の中で、在日米軍関連業務に携わる民間の労働者は、兵たん輸送が戦争行為の一環であることを、身をもって味わわされたのでした。
「戦争国家法案」(有事三法案)は、民間業者を動員する仕組みを二重三重につくっています。
一つは、なんといっても、武力攻撃事態法で戦争協力を国民の「努力」義務としたことです。協力しない国民は「非国民」扱いされかねません。
自衛隊法による業務従事命令による強制動員もあります。医師、看護師、土木・建築技術者、大工、左官、鉄道・軌道・自動車・船舶・港湾の運送業者などが対象とされますが、具体的には政令で定められるため、歯止めがありません。
改悪案では、“出頭命令書”である公用令書の記入事項まで定められました。戦前の「国民徴用令」も、国民総動員のための命令書である「徴用令書」の記入事項を列挙したものでした。「徴用セラルベキ者ノ氏名」「従事スベキ総動員業務、職業及場所」「徴用ノ期間」の必要事項と、うり二つ。まさに戦前の「徴用令書」の復活です。
さらに「指定公共機関」に指定して、そこで働く労働者を動員する仕組みもあります。輸送にかんしていえば、JRや日本通運などが指定されると予想されます。
現在でも、輸送分野でいえば、国は道路運送法にもとづき業者に緊急輸送命令を出す仕組みがあります。陸運業界最大手、日本通運の「防災業務計画」では、緊急輸送を「優先取扱」にすることや、「適切に任務を遂行しなくてはならない」ことを定めています。
また、同社内の災害対策本部が各支店に出す指示・命令について、支店長は「正当な事由がない限り、これを拒むことができない」としています。
これらはあくまで災害時の対策。「戦争国家法案」が成立すれば、国民としての戦争協力「義務」とともに、労働者にとっては、「職務命令」で襲いかかることになるのです。
(つづく)