2002年4月28日(日)「しんぶん赤旗」
医療改悪法案(十九日)、個人情報保護法案(二十五日)の審議入りと同じような光景が、二十六日午後の衆院本会議で三たびおきました。有事三法案=戦争国家法案の趣旨説明と各党質疑があったときです。
始まって一時間もたたないのに、途中退席が相次ぎガラガラになった自民党席。残っている自民党議員といえば熟睡と立ち話です。「学級崩壊」ならぬ政権党が作り出す「国会崩壊」。記者席の空席も目立ち、開会と同時にいっぱいになった傍聴席とは対照的です。傍聴者のなかには約三十人の子どもたちの姿もありました。
戦争国家法案は、憲法にもとづく国づくりの根幹にかかわる重大問題です。政府・与党は、医療改悪法案も個人情報保護法案も「今国会でなんとしても成立を」のかけ声で、会期(六月十九日まで)を逆算して、しゃにむに審議入り日程を決めてきました。いざ審議となれば、先にみたようなていたらくです。
「(法案は)国全体としての基本的な危機管理体制の整備をはかろうとするものだ。国家存立の基本として整備されているべきものだ」(二十六日)
原稿棒読みの答弁で小泉純一郎首相は、くり返しこう強調しました。口利き、機密費、スキャンダル…。自分たち政権党の「危機」の管理さえままならないのに、「国家存立」うんぬんとはよくいえたものです。
審議のやりとりを聞いてさらに驚きました。
法案を推進する与党からは、「国民の中には、冷戦終結したいま、どうして有事法制が必要なのかという疑問や、人権や地方自治が不当に制限されるのではなどの不安がある」(自民党・菱田嘉明議員)と、法案の必要性の説明を求める質問が相次ぎました。対する小泉首相は、「国家存立の基本だ」「武力攻撃事態かどうかは国際情勢、相手国の意図などを総合的に勘案して判断する」と抽象的な言葉を並べたてるだけ。片山虎之助総務相は、「指定公共機関」の内容について問われると、「今後検討していく」と、これまたあいまいな答弁です。
マスコミも「具体像不明 与党も質問 首相、抽象的答弁に終始」(「朝日」)と書いたほどです。
小泉内閣発足丸一年の二十六日に発表された完全失業率は5・2%で過去最悪となりました。国民のくらしを支える政治がいまほど求められているときはありません。それなのに、政府・与党は、国民になおも痛みをおしつけ、腐敗政治にどっぷりつかり、戦争国家体制づくりの法案のごり押しです。しかも、それだけのことをやりながら、真剣さも緊張感もありません。「国家存立」うんぬんをいう前に、政権党としての最低限の資格が問われています。 (高柳幸雄記者)