2002年4月28日(日)「しんぶん赤旗」
一兆九千四百億円。
二〇〇〇年度に防衛庁が中央、地方で調達した物資の金額です。品目の中には、戦車や航空機、艦船などの主要兵器だけでなく、衣料品や燃料、IT関連のソフトウエア、医療品、食料なども含まれます。
防衛庁と契約するためには、防衛庁契約本部の資格審査をパスしなければなりません。パスした企業が登録されている有資格者名簿に載っている企業は、関東・甲信越地方だけで、一万八千六百社あります。
「平時」でも、自衛隊は、二万社近くの企業から物資を調達できるように網の目を築き、実際に二兆円近くの物資を民間から調達しているわけです。
これが「有事」ではどうなるのか――。
有事三法案の一つ、自衛隊法改悪案は、自衛隊が必要とする物資をもっている業者などに「公用令書」で保管命令を出すことができるとしています。これに違反した者は、六月以下の懲役、三十万円以下の罰金が科されます。「有事」の際に、戦争遂行上、さらに必要となる物資を国民から確実にとりあげるために設けた規定です。
かつては、政府でさえ、物資保管命令違反を罰することに、「慎重な上にも慎重な検討が必要であろう」と答弁したことがあります(一九八一年五月八日の衆院安全保障委員会、角田礼次郎内閣法制局長官の答弁)。
それは、保管命令が、国民に危険な“苦役”を強いるおそれもある命令だからです。
角田長官は、保管命令が、自衛隊が戦闘している地域の国民に出された場合、「相当危険な地域」で国民が保管業務に従事させられることもありえるとし、「国民の基本的人権との調整ということは当然問題になる」と指摘せざるをえなかったのです。
「悪質な違反に限定する」 法案の国会審議の初日となった二十六日の衆院本会議。小泉純一郎首相は、罰則についてこう答弁しました。
しかし、「悪質」かどうかを判断するのは政府。損をしたくないからと物資を隠したり、横流しする場合だけが「悪質」ではありません。政府が始めた戦争に反対だからと、引き渡しを拒否しても「悪質だ」と判断される場合もありえます。ここに、戦争を国家の最優先の価値とする「戦争国家法案」の持つ危険な本質があらわれています。
武力攻撃事態法案では、「対処措置」の定義として、自衛隊だけでなく米軍にも「物品、施設又は役務の提供」をおこなうと明記しています。米軍への物品・役務の提供を具体化する法律・協定も、これから準備されます。(つづく)
調達品目 | 契 約 企 業 |
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燃 料 | コスモ石油、カメイ、エッソ石油 |
弾火薬 | 小松製作所、アイ・エイチ・アイ・エアロスペース、ダイキン工業、横河電子機器、石川製作所 |
ソフトウエア | 三菱電機、日本電気、東芝、日本電子計算機、日立製作所、富士通、沖電気工業 |
通 信 | 三菱電機、日本電気、東芝、日立製作所、富士通、沖電気工業、エム・シー・シー、日立国際電気 |
車 両 | 三菱重工業、小松製作所、アイ・エイチ・アイ・エアロスペース、いすゞ自動車 |
機 械 | 三菱重工業、日立製作所、横河電子機器 |
電 気 | 三菱電機、富士通 |
防衛庁中央調達実績の上位30社(2000年度)から作成 |