2002年5月3日(金)「しんぶん赤旗」
有事立法が戦後初めて国会に提出されたなかで、憲法記念日を迎えました。
戦争国家法案は、戦争のために「国民の自由と権利」を制限し、国民が「協力をするよう努める」と明記しています。
小泉首相は、この法案を今国会で成立させるとのべています。
法案に反対する世論と運動は、急速に広がっています。
有事立法に反対し、憲法の積極的意義を明らかにする集会が各地で開かれているのが、今年の特徴です。
小泉首相は、法案を閣議決定した際の談話で、これを「国家の緊急事態対処」とくり返し強調しました。
「緊急事態」を理由にした有事立法は、外国でも侵略戦争や国民弾圧の手段として使われてきました。
まして、日本の憲法は戦争など緊急事態立法を規定していません。
憲法制定議会でも、“一朝事変の際に憲法上の権利を停止できるか”との質問に、政府は憲法を破壊する恐れが絶無でないから防止しなければならぬと明確に否定しました。
戦前、政府が国家総動員法などで国民を侵略戦争にかりたてた教訓から、憲法は再び戦争しない、政府に戦争させないことを定めており、有事立法と絶対に両立しないのです。
小泉首相が、憲法制定議会で否定された口実をもちだし、戦争国家法案を「緊急事態対処」「憲法の枠内」だと強弁しても通用しません。
有事立法は、憲法が「侵すことのできない永久の権利」として国民に保障する基本的人権を破壊します。
小泉内閣は、これを「公共の福祉」だといって、国民に強制しようとしています。
しかし、憲法による自由の保障は「絶対的であって」「『公共の福祉』の名を藉(か)りてこの自由を制限することも許されない」(法学協会『註解日本国憲法』)のです。
そうまでして国民を強制動員しようという戦争とは何でしょうか。
法案は「武力攻撃事態法」といいますが、どこが武力攻撃をしてくるのか。小泉首相も答弁できません。外相は「武力攻撃の可能性は存在しない」と明確に答えています。
にもかかわらず、戦争国家法案の強行をはかるのは、アジアでのアメリカの介入戦争に日本が一体となって参戦するためです。
これが、憲法に真っ向から反することは、「主権が国民に存する」「自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たう」と宣言した国民主権と国家主権の原則に照らしても明らかです。
憲法は、圧倒的多数の国民に支持されています。国民主権と国家主権、恒久平和、基本的人権、議会制民主主義、地方自治など憲法原則の変更を求める国民の声はありません。
政府が提出した有事立法は、この原則にことごとく違反します。
ここに、政治的立場の違いをこえて広範な人々が有事立法に反対してたちあがっている根拠があります。
日本国憲法は、世界に誇りうる先駆的なものです。
憲法が、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を国民に保障し、社会保障の増進を政府に義務づけているのは、その一つです。
憲法破壊の小泉内閣は、急速に国民から見放され、いまや政治を動かす“力”を失いつつあります。
戦争国家法案を廃案に追いこみ、憲法の値打ちが発揮される政治を実現する展望をきりひらこうではありませんか。