2002年5月8日(水)「しんぶん赤旗」
褐色のまるまるとしたタマネギが倉庫に山積。つぶされ畑に埋められるのを待っている――そんな無残な事態が起きています。中国からの輸入急増や消費不況、BSE(狂牛病)などで価格が暴落しているのです。日本共産党の紙智子参院議員らは一、二の両日、七千五百トンの廃棄を決めた北海道で、タマネギ大産地網走管内に実態調査に入りました。
大きな倉庫で廃棄予定のタマネギを調査する紙参院議員(中央)ら=2日、北海道訓子府町農協 |
北見市の南西部、訓子府町(くんねっぷちょう)農協のタマネギ倉庫。一・三トン入る鉄骨のコンテナが四段も重なると「巨大な壁」。上は倉庫の天井近く、人間が小さく見えます。調査団は「わあ、すごい」「こんなに立派なものを捨ててしまうのか」の声。廃棄は訓子府町で約八百トン。全道ではこの十倍です。
夜七時すぎの津別町の畑。移植機のヘッドライトを光らせて作業中の姿があちこちに。「いまは一日二十五時間労働ですよ」というのは、農業委員の伊藤宏さん(56)=畑二十四ヘクタール耕作=。
同町タマネギ振興会の西原芳明会長(39)は「そのタマネギの値がいま採算割れに落ち込んでいる」と。出荷価格は二十キロで千二百六十円。その農家手取りはわずか五百六十円。十アール(一反)で約十六万円です。「十アールの生産経費は十七〜十八万円かかるから、完全な赤字ですよ」
紙さんらが「小泉内閣は、規模拡大しコストを下げてもやっていける農家を増やすのが構造改革だという。機械を入れて」。すかさず「その機械がだめさ」と声。西原さんが黒板に、タマネギ生産に必要な機械や施設の値段を書き出しました。ビニールハウス二百万円、播種(はしゅ)機セット三百万円、移植機三百二十万円……八種類で合計二千四百万円。実際、三年前に就農した人は二千万円はかかったといいます。
「政府は規模拡大し、競争して勝てるようになれというが、価格ダウンについて行けなくて農家はどんどん減っている」と農家の人たち。以前四十戸あった地域の農家がいま十五戸です。
「最低手取り八百円は必要」「農業土木はいらないから農産物の価格保障に回してくれ」というのが共通した声でした。
日本のタマネギ生産の六割近くを占めているのが北海道。その半分が北見市や網走市など、面積で岐阜県に匹敵する網走管内。その大産地が悲鳴をあげているのです。
なぜ暴落か!
多くの人が、消費不況に加え、BSEで野菜まで消費が落ち込んだ、といいます。さらに深刻なのが野菜の輸入。特に「いま急増している安い中国産が市場価格を落としている」のです。
日本の商社が開発輸入する中国からのタマネギ輸入は、これまでの首位のアメリカ産を超え、〇一年度に逆転しました。
訓子府町農協の高橋俊一組合長は、「コストをもっと下げ輸入と競争しろと言われても限界がある。セーフガードは当然の権利。勇気を持ってやってほしいと思っている」と強調します。
ある行政担当者も、野菜は輸入量も価格も変動する、だから事前によく調査、監視し、輸入増加ですぐ発動する体制をとるべきだと提案します。
農家を不安に陥れているのが、十二月に受け取った仮渡金を価格下落のため返さなければならなくなる問題。農家によって五百万〜一千万円も。ある農協幹部は「〇二年産で、それをカバーできる金が入るかどうか。秋も安値だったら借金の積み増しだ」といい、「これは(農家)経営の問題ではなく政治問題だ」という声も出ます。
端野町で畑三十ヘクタールを耕作する水口馨さん(55)は「武部大臣は資格がないよ」とピシャリ。そして「『グローバル化』の名で競争と価格破壊をやられたら、北海道でも農村崩壊になる。食料を守ることは自国の民族と文化を守ることだという立場でがんばりましょう」。丘の畑で紙さんらとがっちり握手しました。