2002年5月9日(木)「しんぶん赤旗」
〈問い〉 いま国際連合で設立準備がすすめられている国際刑事裁判所とはどんな機関なのですか。(長崎・一読者)
〈答え〉 国際刑事裁判所(ICC)は、四月十一日に設立条約批准国が規定の六十カ国を超え、七月に条約が発効します。この裁判所は、戦争犯罪、人道に対する罪、ジェノサイド(大量虐殺)を犯した個人を裁くための常設裁判所です。いまオランダのハーグに置かれている国際司法裁判所(ICJ)は、訴訟の当事者が原則として国家に限られています。国際刑事裁判所は、国際法違反を犯した個人をあつかう初めての常設国際機関となります。
この裁判所は、条約批准国による締約国会議で選出される十八人の裁判官で構成されます。また裁判所から独立した訴追機関として検察局が置かれます。検察官も締約国会議で選出され申し立ての受理や捜査、起訴などの職務を執行します。裁判所で起訴状が承認されると、容疑者への逮捕状が発給されます。事件は国際刑事裁判所が行使できる裁判権の範囲と認めた関係国は、条約により容疑者らを逮捕します。認めない国には裁判所らが協力要請します。刑罰は罰金刑か有期刑、終身刑です。
このような国際機関の設立は国連の発足当初から構想されていましたが、米ソ対立などの国際情勢の中で中断されました。一九九〇年代に、個人の国際法犯罪をあつかう常設裁判所設置の動きが高まり、国連で裁判所規程草案の論議が進みます。そして一九九八年七月、イタリアのローマで国際刑事裁判所設立条約(ローマ条約)が採択されました。各国がこの条約の批准を進め、この四月、発効条件の達成となったものです。
アメリカは二〇〇〇年にこの条約に署名しましたが、ブッシュ政権のもとで、米兵が訴追されることの懸念などから、見直しや裁判所設置反対を表明、条約加盟意思を否定する書簡を国連に送っています。日本は、まだ条約への署名も批准もしていません。
(水)〔2002・5・9(木)〕