日本共産党

2002年5月10日(金)「しんぶん赤旗」

 日本共産党の木島日出夫議員が八日の衆院有事法制特別委員会でおこなった質問の要旨を紹介します。

衆院特別委

木島議員の質問(要旨)


「我が国」の定義

木島議員 他国領域での攻撃の場合、法律は動くのか

官房長官 「攻撃」と認定されればそういうことになる

 木島議員 まず武力攻撃事態法案第二条の「武力攻撃」という言葉の定義であります。二条一号には「我が国に対する外部からの武力攻撃をいう」と書かれているだけです。おそらくわが国国法上はじめての武力攻撃の定義だと思う。ここでいう「我が国」というのは何ですか。

 福田康夫官房長官 「我が国」といったら日本国のことです。

 木島 わが国の領域内にある国民、そして領域、領土、領空、領海、これがわが国の概念の一つであることは、よくわかる。聞きたいのは、わが国の領域の外にある、わが国の軍用機や軍艦、船舶や航空機、これらもこの法案の第二条第一号の武力攻撃の概念である「我が国」に含むのかということです。

 官房長官 わが国の領域内において行われた場合に限らず、たとえば公海上のわが国の船舶等に対する攻撃が、状況によってわが国に対する組織的、計画的な武力の行使に当たるという場合も、これは排除されないと考えています。

 木島 重大な問題を含む問題だと思います。今、公海上にある艦船をのべたが、他国の領域内にあるわが国の艦船、航空機、軍民両方ありますが、とりわけ軍用機や軍艦、これもこの概念の「我が国」の中に入るのですか。

 官房長官 わが国でない国の領域というのは、基本的には入りません。

国民の財産等、私権の制限にかかわる「定義」

 木島 定義というのは非常に大事です。この法律によって、わが国の武装部隊である軍がどう動くか、どういう場合に動くか、あるいはその結果、わが国の国民の財産等の私権がどう制限されるのか、それが定義によって決まるから、非常に大事だということで、厳密にお聞きしたい。公海上にある軍艦は入るが、相手国領域内にある軍艦は入らない、航空機も同じだ、どうしてそういう解釈になるのですか。この法律からどうしてそういう解釈が出てくるのですか。

 中谷防衛庁長官 相手国の、領域の領土、領海においては、相手国の管轄下にあるからです。

 木島 次に、外国の領土内にあるわが国の在外公館、大使館、領事館、公使館。こういうものは、この法律による「我が国」の中には含まれるのですか。

 官房長官 他国にある大使館等公館が攻撃されたというとき、それは一般的には該当しないと考えています。

 木島 要するに例外的には、在外公館にたいする外部からの武力攻撃も、本法の対象になるときもあるという答弁ですが、それでは、例外というのはどういうときですか。

 官房長官 それが諸般の状況から考えて、わが国に対する武力攻撃というように認定される状況においては、それは該当するのではないかということでありますけど、通常において、外国にある公館は、その国に治安は依存しているわけですから、通常はおこらないのではないかと思います。

 木島 諸般の状況によっては、在外公館も、この法律でいう「我が国」に含むという、こんな答弁では、この法律、とても審議できない。諸般の状況なんて、あいまいな概念で、この法律を解釈できないですよ(「そうだ」の声)。大事な問題です。

 官房長官 過去の答弁を申し上げると、外国において日本人の生命、身体、財産または日本政府の機関が、危殆(きたい)に瀕しているという場合に、とくに第一条件であるわが国に対する急迫不正の侵害であるという条件を満たすものであろうかということを考えますと、これも断定的な答えをすることはできない場合だと思いますが、一般的には、ただちにこれらの要件に該当するとは考えられないと、こういう答弁をしているわけです。(場内笑い)

 木島 そんなあいまいなことで、この法律が適用される場合とされない場合が区分けされるというのは、法律として全くまともなものではないといわざるをえないと思う。具体的に聞きます。わが国領域外にある軍用機、軍艦に対する、それが公海であれば、この法律が適用されると答弁しました。九二年にPKO協力法が成立した。九九年に周辺事態法が成立した。昨年、テロ特措法(報復戦争参加法)が成立した。自衛隊がわが国領域外に出動して活動する法制は三つできあがっています。

 この三法で、相手国政府の同意を得て、相手国の領域内で活動する自衛隊に対して、外部から武力攻撃があったときに、どうなるのか。公海上で活動する自衛隊に対する攻撃はこの法律の適用はある。相手国領域内で活動する自衛隊は適用がされない。そのように区分けしていいのですか。

 官房長官 どういう状況で起こるかということが問題。そもそもPKO部隊が戦闘地域に行くことはありません。そういうケースは考えにくい。在外公館のことについては、わが国がこの法律で決めているのは、わが国が武力攻撃を受けるという事態で考えられた対応措置で、そのわが国がほかの国に出かけて行って何かするということも考えにくい事態です。

 木島 私は法律の解釈を聞いているのです。想定できるかどうかは政治判断の分野です。そんなことは聞いていない。テロ特措法でインド洋、アラビア海に自衛隊が出ていっている。相手国の同意があれば沿岸にも入る。その自衛隊の艦船に外部からの不法な組織的、計画的な攻撃があったときに、この法律は動くのか。「武力攻撃」の概念に入るのか否かと聞いているのです。

 防衛庁長官 公海上で武力攻撃があった際には、それが自衛権に該当するかどうか、組織的、計画的なものであるかどうか、いわゆる自衛権発動の三要件にあうかどうかについて、自衛権を発揮します。

 木島 相手国の領域内で活動する自衛隊は、この法律の適用からはずれるとはっきり答弁できますか。

 防衛庁長官 相手国の領域内では、第一義的に相手国の責任ですが、不測の事態については、正当防衛、緊急避難して、(自衛隊法)九五条の武器防護を適用するとテロ特措法でも定めました。PKO法でも定めました。

 木島 そんなことを聞いていない。この法律の第一条の「武力攻撃」の概念に入るのかと聞いているのです。入らないということですか。だから正当防衛とか緊急避難とか武器防護とかいう概念で攻撃に立ち向かうという答弁ですか。

 官房長官 それは相手国の領域のなかにある、それが組織的、計画的な攻撃を受けるということを認定できるかどうかという問題です。通常はそういうことは相手国領域で起こり得る場合には、相手国がそれを守るということが通常です。

 木島 そういう前提ぬきで、他国領域内にあって、三法で動いている自衛隊に対する組織的、計画的な攻撃がなされたときに、この定義にのるのかと聞いているのです。

 官房長官 繰り返しになりますが、わが国に対する計画的、組織的な攻撃だと認定されるかどうかが問題です。

 木島 認定されるような状況があれば、この法律が動くということですか。

 官房長官 理屈でいえばそうなります。

 木島 外相に聞く。一八条によると、「政府は、国際連合憲章第五一条及び日米安保条約第五条第二項の規定に従って、武力攻撃の排除に当たって我が国が講じた措置について、直ちに国際連合安全保障理事会に報告しなければならない」。国連憲章五一条の「武力攻撃」と本法案の「武力攻撃」という概念は同じですか。

 川口外相 基本的には同じ概念です。

国連憲章51条の「武力攻撃」の定義はない

 木島 国連憲章五一条の「武力攻撃」の定義はない。難しい議論が論じられてきました。「個別的自衛権」発動の要件として、国連加盟国に対して武力攻撃がなされたときという概念です。定義はできていない。一九七四年十二月十四日に国連総会は、侵略の定義を決議しています。七つの概念の四番目に、「他国の陸海空軍兵力あるいは船舶、航空機に対する攻撃」とあります。だから憲章と法案の「武力攻撃」の概念が同じであれば、他国領域内にある軍隊に対して武力攻撃がされた場合には該当するということになります。それでいいですか。

 官房長官 国連憲章上、侵略行為を決定する権限が安保理にあることを前提にしつつ、このような行為も含めて、侵略行為を列挙したものですが、本決議はあくまでも安保理のための指針であって、武力の行使を論じたものではありません。


「武力攻撃」の定義

木島議員 対処措置の中の「武力攻撃」に「おそれ」は含むのか

官房長官 含まぬ―含む―一部含む 答弁二転三転

 木島 定義を聞いている。第二条第二号について聞きます。「武力攻撃事態」の定義です。「武力攻撃事態」には三つある。一つは「武力攻撃が発生した場合」、二つは「武力攻撃のおそれのある場合」がわざわざカッコして書きこまれています。もう一つが「武力攻撃が予測されるに至った事態」。わからないのは、「外部からの武力攻撃」という生の武力攻撃という概念で使っているのか、「おそれ」を含むという概念でも「武力攻撃」という言葉を使っているのかです。あとの条文にもたくさん出てきます。

 一つだけあげましょう。二条六号の「対処措置」のイの(1)「武力攻撃を排除するために必要な自衛隊が実施する武力の行使、部隊等の展開その他の行動」、措置の中心ですよ。この「武力攻撃」という概念に、二条一号の生の「外部からの武力攻撃」の概念を使っているのか、「おそれ」まで含まれた概念の武力攻撃という意味で使っているのか、決定的に意味が違ってくる。どうなんですか。

 官房長官 二条二号の「武力攻撃事態」の冒頭で規定している「武力攻撃」には、「おそれのある場合」が含まれています。その他の個所で規定している「武力攻撃」には、「おそれのある場合」は含まれていない。すなわち、基本的に本法案では「武力攻撃」という用語は、武力攻撃が発生した場合に使用しています。なお二条二号等の「武力攻撃が予測されるに至った事態」の「武力攻撃」に「武力攻撃のおそれのある場合」を含めていないのは、「武力攻撃のおそれを予測する」とは「武力攻撃を予測する」と同じ意味だということです。

 木島 この法律の中で、「武力攻撃」という概念のなかに「武力攻撃のおそれのある場合をふくむ」という意味で「武力攻撃」という言葉を使っているのは、第二条二号の「武力攻撃事態」という概念のときだけだということでいいですか。

 それでは「対処措置」について聞きます。法案二条六号に「対処措置」とある。「第九条第一項の対処基本方針が定められてから廃止されるまでの間に、指定行政機関、地方公共団体又は指定公共機関が法律の規定にもとづいて実施する次に掲げる措置をいう」、二つあって、イが「武力攻撃事態を終結させるために実施する次に掲げる措置」で、三つのべています。(1)が「武力攻撃を排除するために必要な自衛隊が実施する武力の行使、部隊等の展開その他の行動」。この「武力攻撃を排除するために必要な」という形容句は「自衛隊が実施する武力の行使」だけにかかるのですか、それとも「部隊等の展開その他の行動」にもかかるのですか。

 官房長官 これは全部にかかります。

 木島 全部にというのは「武力の行使」と「部隊等の展開」と「その他の行動」です。要するに、「武力攻撃を排除するために必要な」という形容句は、「おそれ」は含まないという答弁ですか。そうするとこの「対処措置」のイ(1)は「おそれ」も「予測」も排除されるということですか。

 官房長官 これは、「武力攻撃のおそれ」のあるときも含む。つまり武力行使の準備段階も入っているという意味です。

 木島 先ほどの答弁で、六号イ(1)の「武力攻撃を排除するために」には「おそれ」は入っていないと言ったではないですか。整合性はどうなるのですか。

 (官房長官答弁に立てず、審議中断)

答弁できないことが法律の欠陥示している

 木島 志位委員長もこの質問をしました。六号イ(1)の「武力攻撃を排除するために」という場合は、「おそれの場合」も、「予測の場合」も入らないという答弁を総理以下している。先ほどもそういう答弁でした。それで聞いたら、「武力の行使、部隊の展開その他の行動」全部にこの修飾句がかかるという答弁して、さらに聞いたら答えられなくなりました。

 「おそれが入る」と言いました。この法案の中では、「武力攻撃」という生の言葉をいろんな形で使っています。「武力攻撃の発生」という言葉、「武力攻撃を回避する」とか、いろんな概念をせまい意味の「武力攻撃」なのか、「おそれ」を含む概念なのか、使い分けしないで使っています。それによって法律は変わってきます。どういう措置ができるのか、自衛隊はどういう場合に動けるのか動けないのか、決定的に変わってくるので、根本概念について当然答弁できなければいけないはずの質問をしているにもかかわらず、こんな問題にもすぐに答弁できないというのは、この法律がいかに欠陥かということを示しているのではないですか。

 防衛庁長官 昨日の審議で説明した内容だが、この法律の組み立てが、最初総則で二条で定義を言っています。この定義のなかに、対処措置として実施する措置を列挙したもので、各措置はそれぞれの権限法にしたがって実施されます。列挙した「武力の行使」を権限において実施するのは自衛隊法の八八条に、武力行使の規定があり、その規定にもとづいておこなうし、「武力の行使」というものは、武力攻撃がおこなったあとでないと発動しない。現実に自衛隊の出動についても七六条に書かれていますが、出動したあとでないと「武力の行使」はできません。

 木島 きのう、「武力攻撃を排除するために必要な自衛隊が実施する武力の行使」の「武力攻撃の排除」のなかには「おそれ」は入らないという答弁をしています。きょう聞いたら、その修飾句は「武力の行使」だけでなく、「部隊等の展開」や「その他の行動」まで全部かかっているという。それだったら、「おそれの場合」や「予測の場合」は対処措置のイの(1)はできないのだなと聞いたら、おかしくなった。まともな答弁になっていません。

 官房長官 六のイの(1)の「武力攻撃」に「おそれ」は含まれていません。「武力攻撃を排除するために必要な…部隊等の展開その他の行動」の最後の「部隊等の…」には、「おそれ」の事態や「予測」の事態における準備活動は含まれています。「武力の行使」はあくまでも自衛権行使の三要件を満たすときのみに可能で、「おそれ」や「予測」の事態でおこなうことはできないということです。

 木島 そうなると最初の官房長官の答弁はおかしくなる。「武力攻撃を排除するために」という修飾句が「部隊の展開」や「その他の行動」にまでかかっているという答弁が出ました。そうなると「おそれ」の場合はこの条文は動かないのではないかと質問しました。それに対してまだ明確な答弁になっていません。

 時間の関係があるので、次に進みます。「武力攻撃」の概念にもどる。「我が国に対する外部からの武力攻撃」という概念ですが、これは攻撃する主体は何ですか。国だけか、大規模なテロ集団その他も含まれるのですか。

 官房長官 国または国に準ずる者という規定になっています。

 木島 準ずる者だけではわからない。どんな者が入るのですか。

 官房長官 これは、具体的に言うべきではありません。国と同等、準ずる組織体と考えるべきです。

政府の恣意的な解釈でどうにでも法律が動く

 木島 この法律は日本の実力部隊である自衛隊がどういう場合に動けるのか、動けないのか、どういう動きができるのか、そのときに国民の権利、人権がどう制限されるかがかかっている法律です。どういう場合にこの法律が動き出すのか、動けないのかは日本の国にとって国民にとっても決定的です。だから概念は政府が変われば変わるという答弁では、とてもではないがこの法律は認められません。だれが考えても解釈が分かれないような明確な解釈が示されて、賛否ができる。武力攻撃の定義しか聞いていない。それがこの程度です。納得できません。

 官房長官 国、国に準ずる者と言うしかありません。

 木島 そんなあいまいな定義づけでこの法律が作られたら、政府の勝手な恣意(しい)的な解釈でどうにでもこの法律が動き出すということを指摘したい。断じて認められません。

 


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