2002年5月12日(日)「しんぶん赤旗」
〈問い〉 最近、終戦後まもなく児童憲章というものがつくられたと聞きました。どんなものなのですか。(東京・一読者)
〈答え〉 児童憲章は、制定されてまもない日本国憲法の精神にもとづいて、一九五一年五月五日制定された、児童の権利の宣言的文書です。
児童憲章は前文で、「児童は、人として尊ばれる」「児童は、社会の一員として重んじられる」「児童は、よい環境の中で育てられる」という三つの理念を示しています。
憲章は、▽正しい愛情と知識と技術をもって育てられる▽自然を愛し、科学と芸術を尊ぶようにみちびかれる▽就学のみちを確保され、また、十分に整った教育の施設を用意される▽よい遊び場と文化財を用意され、わるい環境から守られる―など、すべての児童の権利を十二条にわたってかかげています。
憲章が制定された当時は、終戦直後の荒廃した社会環境のなかで、子どもを守り育てる施策の充実が急がれていました。一九四七年に制定された児童福祉法は、国と地方自治体が、保護者とともに、児童を心身ともに健やかに育成する責任を負うことを定めています。児童憲章はこのことを、児童の立場から、権利として確認したものです。
児童憲章は、児童福祉法によって設置されたばかりの中央児童福祉審議会が、制定を発議しました。これを受け、各界の代表者によって構成される児童憲章制定会議(内閣総理大臣主宰)が制定しました。
法的な効力はありませんが、国も制定にかかわった一員として、児童憲章を政治に生かす責任を負う立場にあります。歴代自民党政権はこの憲章をなおざりにしてきました。「子どもの最善の利益」を保障することなどをかかげた「子どもの権利条約」(一九八九年国連採択、一九九四年日本政府批准)とともに、児童憲章の完全実施が求められています。
(博) 〔2002・5・12(日)〕