2002年5月13日(月)「しんぶん赤旗」
個人情報保護が問題になったのには背景があります。一九九九年、個人情報を全国のコンピューター網にのせて政府が一元的に管理するよう住民基本台帳法が「改正」されたこと、情報通信技術の急速な発展により、民間企業に膨大な個人情報が集積されたことで、プライバシーを保護する法制定が求められました。
ところが、今度の法案には肝心のプライバシー権が明記されていません。
小泉首相も、プライバシー権について、「必ずしも言及する必要はない」(四月二十五日の衆院本会議)と消極的です。
一方、国民が自分の個人情報の開示を求めても、「事業者の業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれがある場合」には、これを拒否できるとしています。(三〇条一項)
プライバシー権さえ明記せず、自らの個人情報の開示を求める権利よりも、事業者の都合を優先させるもので、個人情報を保護する法律としては極めて不十分です。
法案が、報道・言論の自由を脅かすものとなっているのは、自民党がメディア対策に乗り出したこととかかわっています。一九九八年の参院選敗北や森内閣の中川秀直官房長官にかかわる報道を契機に、党内に「報道と人権等のあり方に関する検討会」や「放送活性化委員会」を設置。とくに、新聞や雑誌など活字メディアにたいする主務官庁の指定が検討されてきました。メディア規制が前面にでてくることになったのです。
法案にたいし、報道関係者、言論人などから「憲法で保障された『表現の自由』に政府が介入するもの」(四月二十四日、日本新聞協会の緊急声明)、「言論・表現の自由という民主主義の基本理念に反する」(五月九日、日本ペンクラブの要望書)など、反対の声があがっています。この背景には、法案の内容とともに、こうした自民党の動きもあるのです。
日本共産党は、法案が、報道・表現の自由を侵害し、不正や腐敗の内部告発、暴露に大きな障害を持ち込む危険があるとして、断固反対の立場を表明しています。
そのうえで、個人情報保護法制の充実は必要だという立場から、報道・表現の自由を侵害する規定をいっさい削除し、法案の性格を個人情報取扱事業者にたいする業法的なものとし、文字通りの個人情報保護法にするよう求めています。(おわり)