2002年5月14日(火)「しんぶん赤旗」
一つの表情や言葉が、その人の本心を表していることはよくあります。九日の衆院有事法制特別委員会での小泉純一郎首相の答弁ぶりがそれでした。
「日本の憲法はさきの戦争の反省を踏まえて、力には力で対応するのではなしに、道理と信義をもってのぞむのだという強い決意でつくられたはずだ。この憲法の有事に対する考え方をどう認識しているのか」
民主党議員にそう質問された小泉首相は、不愉快そうな表情で目を細く光らせ、薄い唇をゆがめて言いました。
「憲法改正論議は妨げないと私は言っているんです」
有事に道理と信義などとなまっちょろいことを言っていられるか、そんな憲法だから変えなければならないのだ―こんな本心が読み取れそうな場面でした。「憲法の範囲内で有事に対応する法整備を図っていく」と言いそえたものの、憲法を邪魔者扱いする小泉首相らしい場面でした。
しかし、ことは日本国憲法の問題です。「小泉らしい」と笑って済まされる問題ではありません。憲法順守義務を負う首相が国権の最高機関である国会の場でのべたのですから。
小泉首相は、この二日前にも「(憲法には)おかしい点はたくさんある。例えていえば、憲法九条もそうだ」などという暴言もはいています。
なぜおかしいのか。自衛隊について戦力じゃないと(政府は)規定しているが、一般国民は自衛隊は戦力だと思っているからだ――小泉首相の理屈はこの程度です。昨年秋のテロ対策特別措置法(報復戦争参加法)のときとまったく同じ論法です。
しかし、戦力放棄を宣言した憲法のもとで自衛隊を創設・増強し、「おかしい点」をつくりだしたのは、ほかならぬ自民党です。
そんなことは百も承知で、「おかしい点」を憲法になすりつける小泉首相。この論法からいけば、有事法制も二の舞いになるのではないか。憲法違反を承知の上で有事法制をつくって、その戦争国家体制に合わないからといって憲法を「おかしい」と葬り去る…小泉首相の答弁は、こんな危険を思わせます。(藤)