日本共産党

2002年5月16日(木)「しんぶん赤旗」

厚生年金負担2倍に

厚労省が25年度保険料試算

人口推計もとに引き上げ幅拡大


 厚生労働省は十五日、最新の将来人口推計にもとづく公的年金財政の試算を公表しました。サラリーマンが加入する厚生年金の二〇二五年度の保険料率は年収の24・8%(労使折半)になると試算しています。現行は13・58%(ボーナスを含めた総報酬制で計算)。これは今後の長期の出生率を一・三九と推計した場合(中位推計)です。出生率を一・一〇と最も低く見込んだ場合(低位推計)は、27・5%と、現行の保険料の二倍に値上げされます。

 一九九九年の前回財政再計算では、二〇二五年度の保険料率を21・6%と推計していました。しかし、今年一月の新人口推計で出生率のいっそうの低下が予想され、それにもとづいて推計し直したものです。年金財政への国庫負担を、現在の三分の一から二分の一に引き上げた場合は、22・4%(中位推計)になります。

 現行、月額一万三千三百円の国民年金の保険料は、二〇二五年度には二万九千六百円(九九年推計の17%増)になります。出生率が最も低迷した場合は三万三千円になると試算しています。国庫負担を二分の一にした場合は、それぞれ二万千六百円、二万四千円の保険料負担となります。

 試算は、二〇〇四年の年金制度見直しの基礎資料となりますが、この試算をどう位置付けるかは、社会保障審議会年金部会などで今後、論議されます。

 厚生労働省は同日、最新の将来人口推計を踏まえ、二〇〇〇年十月にまとめた「社会保障の給付と負担の見通し」の改訂版も公表しました。年金、医療、介護など〇二年度予算ベースで八十二兆円の社会保障給付費は二五年度に百七十六兆円に拡大するとしています。

2025年の年金保険料試算
99年財政再 高位推計 中位推計 低位推計
【国庫負担割合1/3】
厚生年金 21.6% 22.8% 24.8% 27.5%
(100) (106) (115) (127)
国民年金 25,200円 27,100円 29,600円 33,000円
(99年度価格) (100) (108) (117) (131)
【国庫負担割合1/2】
厚生年金 19.8% 20.6% 22.4% 24.8%
国民年金 18,500円 19,900円 21,600円 24,000円
(99年度価格) (100) (108) (117) (130)
注1 カッコ内は99年財政再計算ベースを 100とした指数。注2 現在の保険料(率)は、厚生年金13・58%(総報酬ベース)、国民年金13,300円。

解説

少子化克服示さず、値上げ論の“根拠”に

 厚生労働省が十五日に公表した年金保険料の将来試算は、新しい人口推計を理由にして、保険料引き上げが凍結された現状の早期解除を求め、少子化の進展によって従来の試算以上の値上げが必要なことを国民に示そうとしたものです。

 政府は、二〇〇四年度に厚生年金と国民年金の保険料の値上げを実施し、二〇二五年度まで段階的に値上げを続けていく計画をもっています。値上げは二〇〇〇年度から実施する予定でしたが、世論の反発で凍結。小泉内閣は、基礎年金の国庫負担の二分の一(現行三分の一)への引き上げとともに、この凍結の「早期解除」を打ちだしています。

 この二〇二五年度までの値上げ計画の根拠に使っているのが、人口推計(国立社会保障・人口問題研究所)です。これが一月に改定され、前回推定に比べ少子化で子どもの数は減り、寿命が延びて高齢者は増えると判断。従来以上の保険料引き上げが必要と試算をだしてきました。

 しかし、新人口推計には、少子化克服の政策を実施した場合の影響、効果をまったく含んでいません。少子化が進行している現状の社会的、経済的な要因をふまえて推計したものです。少子化対策を打ち出しながら、改善できなかったこの間の政治の失敗が反映した推計ともいえます。新人口推計をもとに年金制度改革を議論している社会保障審議会(年金部会)でも、少子化対策が加味されない将来の推計値に疑問の声があがっています。

 少子化の進展を前提にするかぎり制度を維持するため保険料引き上げか、引き上げなければ給付を削るか、それとも年金支給開始年齢を遅らせるか、選択肢は国民の負担増しかありません。前回の年金改悪では、国庫負担引き上げを先送りし、給付を削ったうえ、厚生年金の支給開始年齢を二〇二五年度まで段階的に六十五歳にすることを決めました。これ以上の負担増は年金への不信を強め、保険料値上げは現在の国民年金の保険料未納問題をいっそう深刻にして年金制度の根幹を掘り崩すことになります。(斉藤亜津紫記者)

 


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