2002年5月17日(金)「しんぶん赤旗」
中谷元・防衛庁長官は十六日の衆院有事法制特別委員会で、憲法否定の答弁を連発しました。
中谷長官は自民党の岩屋毅議員の質問にたいし、軍事裁判などの特殊な制度について、「検討したい」と答弁しました。
岩屋議員は「自衛隊を正式に軍隊と認め、軍刑法、あるいは軍事裁判のような特殊な裁判制度というものを考案するべきではないか」と質問。これにたいし中谷長官は「憲法七六条で、旧軍の軍法会議のような通常の裁判体系と切り離されたものは許されていない」としつつ、「(自衛隊も)国際ルールおよびわが国における法令にもとづいた行動が必要で、そういうなかで検討したい」との考えを示しました。
岩屋議員はまた、捕虜の待遇を定めたジュネーブ条約(第三条約)に触れ、自衛隊および自衛官について「国際法上の地位を明確にしておく必要があるのではないか」とただしました。
中谷長官は、日本はジュネーブ条約(第三条約)を批准しているが、条約にもとづく「法律整備がされていない」として、「早期に整備を図る必要があると思う」と答えました。
中谷長官は、自衛隊について「軍隊の定義がいろいろあり、国を守る組織を軍隊と呼ぶなら、軍隊だ。外国からの侵略に対抗する実力を持つものを軍隊というのであれば、自衛隊も軍隊というのは可能であり、国際社会においても軍隊と位置付けられていると認識している」とのべました。自民党の石破茂氏への答弁。
中谷長官の答弁は、歴代政府が「自衛隊は憲法が禁じる戦力に該当せず、わが国を防衛するための必要最小限度の実力組織」であって「軍隊とは異なる」としてきた見解にも反するもの。
憲法第九条に明白に違反する自衛隊を合憲だといいくるめてきた政府見解にも反し、「自衛隊は軍隊」だというのは、憲法をきわめてぞんざいに扱う小泉内閣の姿勢を示すものです。
中谷長官は、日本の在外公館の警備のために防衛庁からの自衛隊員派遣を「検討する必要がある」と答弁しました。保守党の西川太一郎議員への答弁。中谷長官は「危機管理について、そのマインドもあり、知識があり、経験を積んだ人が警備をすることは非常に意義がある」と主張。「在外公館の警備については現行法上、自衛隊の任務、権限とはされていない」としながらも、「(在外公館への自衛隊員派遣は)わが国の法体系等の議論を重ね、検討する必要がある」と述べました。