2002年5月18日(土)「しんぶん赤旗」
自衛隊艦船のインド洋派遣に関して、防衛庁・自衛隊が軍事産業に技術者の派遣を要請。すでに派遣した疑いもある――。十七日の衆院テロ問題特別委員会で日本共産党の児玉健次議員が防衛庁を追及しました。本紙が入手した防衛庁・自衛隊と軍事産業の内部文書でその危険な実態をみると…。
内部文書によると、防衛庁・自衛隊は、昨年十一月二十九日に、横須賀造修補給所で「海外派遣に対する臨時修理態勢の確立の依頼」説明会を開催。武器部長と誘導武器科長が、約二十社に十一項目の派遣内容とこまかい注意を与えていました。テロ対策の説明も行われました。
説明会では、初の紛争地派遣であることを強調した上で、万全の支援態勢確保を依頼。さらに即時対応できる関係者名簿を提出し、入港地や派遣する人名など、すべて秘密扱いにすることを確認させていました。修理は寄港時に実施し、洋上ではやらないとしています。
これに対し、石川島播磨重工の場合は東京の航空宇宙事業部が担当し、ヘリコプター着艦拘束装置の修理と20ミリ高性能機関砲の修理の技術者(管理職のみ)計十九人の名簿を提出しました。
同社は、紛争地域に派遣する場合、「防衛庁と会社との調整が必要だ」とし、秘密保持のための「自衛隊海外派遣要請対応マニュアル」に従った人選、協議をしながら防衛庁・自衛隊の要求に対応していくとしています。
十七日の委員会で中谷元防衛庁長官は、「万一の場合の要請」などと弁明しました。しかし、「万一」どころか、すでに派遣している、という重大な疑いがあります。
各軍事産業に勤務する労働者は「民間技術者のサポートがないと、ハイテク兵器を扱う作戦は遂行できない。インド洋周辺に派遣していないなんて考えられない」と口をそろえて指摘しています。
高度なコンピューターなどハイテク技術を駆使した兵器による現代戦では、軍事産業の技術者の協力、支援がなければたたかえないといっても過言ではないからです。
イージス艦などハイテク兵器・システムの塊の維持管理と修理は、自衛官の技術レベルではできません。
リムパック(環太平洋合同演習)や規模の大きな演習・訓練では、必ず軍事産業の技術者が出張してサポートしています。米本土で行われる射撃訓練でも同様です。
しかし、戦闘地域への民間技術者の派遣には、法的な位置づけがありません。今後の有事法制関連法案で民間技術者を派遣するための法整備をおこなってくる危険性があり、技術者のあいだに「戦場に動員される」という強い不安の声があがっています。
石川島播磨重工本社広報室の話 具体的要請はきていないのでお答えできない。