2002年5月21日(火)「しんぶん赤旗」
第二次大戦中に日本軍の占領下に置かれたフィリピンでは、有事法案や小泉首相の靖国神社参拝にたいし、アジアの平和と安定を脅かすとの警戒や日本はそこまできているのかという驚きの声が、政治家や法律家、草の根の活動家などからあがっています。(マニラで宮崎清明)
アメリカの戦争に協力する仕組みづくりではないかとの懸念を表明するのは、青年時代に日本の軍事占領とたたかい、戦後はジャーナリストを経て労働大臣を務め、いま上院外交委員長のブラス・オプレ議員(75)です。
「もし台湾海峡をめぐる緊迫で日本が米国の側に立って戦争に参加すれば、地球規模の戦争になりかねない。日本は米国の外交政策に従うだけでなく、米国の陰から出てアジアの平和と安定を守る大国になるべきだ」
戦争放棄の日本の憲法がどうなるのか―。ほとんどの人が共通して指摘した点です。
エストラーダ前大統領の弾劾裁判で議長を務めたアキリノ・ピメンテル上院議員(68)は「日本の占領でフィリピン人の多くが死傷し、災難で苦しんだ。日本は私たちの国の発展を助けるために、調和と平和で模範を示すべきだ」といいます。
フィリピン憲法起草委員を務めたルネ・サルミエント弁護士(48)は「首相が非常大権で国民を戦争に動員できる、それは本当か」と有事法案の内容に驚き、アジアの平和への悪影響をこう懸念します。
「戦犯を合祀(ごうし)した靖国神社に参拝した小泉首相は、アジアの人たちに悪いメッセージを送った。有事法制法案が国会で可決されれば、日本の自衛隊が他国を武力攻撃するために米軍とともに出動するだろう。これは非常に危険で、アジアの平和と安全保障を損なう」
市民行動党(アクバヤン)の女性下院議員ロレタ・ロサレスさん(62)は「日本は広島、長崎に原爆を落とされた。戦争では、何百万人もが犠牲になった。戦争を放棄し国際紛争を平和的に解決すると誓った憲法を持つ日本は、ブッシュ米政権の戦争政策とともに歩むべきではない」と警告します。
非核フィリピン連合書記長で女性弁護士のコラソン・ファブロスさん(52)は「有事法制法案は平和憲法への重大な挑戦だ。日本の反核・平和運動の草の根からの反撃に連帯したい」と表明します。
有力紙に政治論評を寄せているフィリピン大学教授ランドルフ・ダビット氏(56)は、日本の軍国主義復活の危険を指摘。「新ガイドライン(日米軍事協力の指針)に続き、今度は有事法制まで。日本の軍国化はそこまできているのか」と憂慮を隠しません。
「国民に奉仕する高潔な政治家」として人望の厚いボニファシオ・ギリエゴ元下院議員(81)も「戦争協力を拒否したら刑事罰とは、とんでもない人権侵害だ」と語ります。
マラヤ(自由)紙の元発行人兼編集者ジョー・ブルゴス氏(61)は、「知り合いのすべてのジャーナリストに日本が戦争国家になる危険について知らせたい」と、事態の重大性にふれました。