日本共産党

2002年5月23日(木)「しんぶん赤旗」

強行など論外 有事3法案の大問題 <下>

「戦時」の名で米国の戦争に国民を強制動員


 有事三法案の審議のなかでは、米軍の戦争に自衛隊が武力行使をもって参戦する重大問題とともに、「戦時体制」と称して国民を強制動員し、国民生活や経済を国家の統制下に置く危険性も、ますますはっきりしてきました。


「周辺事態法」でできなかった強制動員が可能に
自治体、マスコミ、大学も

 米国がアジア太平洋地域でおこす介入戦争に日本が協力する「周辺事態法」(九九年成立)でも、自治体・民間動員の規定が盛りこまれています。自治体には「必要な協力を求める」、民間には「協力を依頼できる」というもので、強制力を持たないことが建前とされています。

 ところが、「武力攻撃事態法案」では、国民も自治体も強制動員できる仕組みになっています。すべての国民に「必要な協力をするよう努める」と努力義務を課し、自治体に加え、指定公共機関の戦争協力については、「責務」と明記(第五条、第六条)。首相には法的拘束力のある指示権が与えられ、拒否すれば直接乗り出して執行することもできます。

 指定公共機関は政令で定められ、政府の勝手な判断でいくらでも指定を広げることができます。政府は、災害対策基本法で指定されている六十機関を「参考」にするとの見解を示しました。これは、各種の研究所、NHK、道路公団、空港公団、JR、NTT、電力・ガスの各社、日本通運など広範囲にわたっています。

 マスコミでは、NHKが法案に明記され、民放も「指定される可能性がある」(同見解)とされています。新聞社も「協力いただく可能性はないわけではない」(福田康夫官房長官)と否定していません。

 学問の府である大学についても、「具体的な(協力)内容を検討していきたい」(遠山敦子文部科学相)と答えています。

 自衛隊法は、医療、土木建築、輸送の業者に業務従事命令が、物資の取り扱い業者に物資保管命令が出せるほか、土地や施設、物資の取り上げもできる仕組みです。

 今回の同法改悪案には罰則として、保管命令違反者に六月以下の懲役、三十万円以下の罰金、物資収用などのためにおこなう立入検査を拒否した者に二十万円以下の罰金も盛りこまれています。

戦争反対、非協力の思想が処罰の対象になる

 政府・与党は、憲法が定める基本的人権について「尊重する」としています。しかし、審議のなかでは、国民を戦争に強制動員するため、「内心の自由」をも踏みにじる危険が明らかになっています。

 保管命令違反者への罰則について、中谷元・防衛庁長官は「本人の内心には関係ない」と答弁し、戦争反対という思想・信条から戦争協力に拒否しても罰則が科せられるとしました。まさに、国民の思想・信条そのものを処罰対象とするものです。

国民生活や行動まで国家の統制下に

 「武力攻撃事態法案」は、国民の自由と権利について「制限が加えられる」と包括的、無限定に制限できることを明記。実際、どの自由と権利がどの程度制限されるのかは、今後二年間で法整備される個別法で定めるとしています。

 福田官房長官は「集会や報道の自由」が認められるのは「あくまでも『公共の福祉』に反しない限りだ」(九日)と言明し、戦争反対の集会や報道の自由まで、権利制限の対象になりうるとしました。また、「(有事法制を)万全にするため、国家的な必要最小限度の秘匿は考えなければならない」として、スパイ防止法(国家機密法)の制定を示唆。「罰則も考えていくべき問題だ」と、罰則付きで国民の知る権利を奪うことも検討課題としました。

 「武力攻撃事態法案」では今後二年以内に「国民保護」のための法制を整備するとしています。しかし、審議で出てくる答弁は「保護」どころか、国民生活や行動を制限、統制することばかりです。

 法案には「武力攻撃事態」に対処する措置として「生活関連物資等の価格安定、配分その他の措置」があげられています。福田官房長官は、国による標準価格の決定や配給も考えられるとしています。

 福田長官は、これが石油ショックや狂乱物価に対応するため一九七三年につくられた経済規制の法律を想定していると答弁。例として「国民生活安定緊急措置法」や「生活関連物資等の買占め及び売惜しみ緊急措置法」、「石油需給適正化法」をあげました。

 これらの法制は、石油ショック時に業者の買い占めや売り惜しみをやめさせるなど必要なものでしたが、「有事」にもこれらの法制を適用するのは、戦争を何より優先して、国民生活を国の統制下におくことになります。

 「避難」を名目にした訓練に平時から国民を動員することも想定しています。中谷防衛庁長官は「外出制限、交通の規制も必要。具体的な方法は今後の課題として検討する」と答弁。その内実は、自衛隊や米軍が行動しやすくするために国民の行動の自由さえ奪うものです。


情報の秘匿、外出制限まで

閣僚の答弁

 遠山敦子文部科学相(国立大学が指定公共機関に含まれるかとの問いに)社会的存在としての大学、学校の空間がどう日本の国民の安全に資していくかも考えられるところで、今後検討したい

 福田康夫官房長官(「スパイ防止法」制定について)法律を万全にする意味で、必要最小限度の秘匿を、とくに国家的なものについては考えていかなければいけない

 中谷元・防衛庁長官(武力攻撃が行われたときの通行制限が明記されていないとの問いに)外出制限や交通規制も必要だ

 


もどる

機能しない場合は、ブラウザの「戻る」ボタンを利用してください。


著作権 : 日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 Mail:info@jcp.or.jp