2002年5月23日(木)「しんぶん赤旗」
日本共産党の児玉健次議員は、二十二日の衆院予算委員会で中国・瀋陽総領事館事件について、「道理のある外交交渉は、事実に立脚してこそ可能になる」として、外務省自身がまとめた時系列の対応一覧表を示しながら、政府に三つの点で事実関係をただしました。
ひとつは、事件発生から五人の北朝鮮住民の連行まで、現場の抗議の言明も、外務省の指示もなかった問題です。
児玉 対応一覧表に外務省の「抗議」の文言が初めて出てくるのは十四時五十分ごろだ。(事件の発生した)十四時からこの間の約一時間、「抗議」ということがこの時系列表示にはまったく出てこない。現場も外務省も抗議すべき事態と認識していなかったのではないか。
川口順子外相 外務省にこの情報が入ったのは十四時半ごろ、抗議のうえ身柄を構内に戻すよう指示を試みたのが十四時五十分ごろなので、二十分間で判断をした。
児玉 十四時ごろから約一時間、日本の領事館担当者と中国側は終始接触していた。それなのに、立ち入りと連行への言葉による不同意の意思表示、抗議がなされていない。
外相 警備担当副領事が現状維持のために武装警察詰所入り口に立ちふさがって移動を阻止したということであって、現状維持することをずっと態度で表している。
児玉 あくまで「現状維持のため」で、抗議のためではない。現状維持と抗議は異なる。
十四時半ごろ、中国課補佐から車で(大連に向け)走っていた岡崎総領事に対し、「追って連絡する旨述べた」。同じころ、東北アジア課補佐は、査証担当副領事に対し、「更なる指示あるまで現状維持せよ」と指示している。ここからも外務省が抗議すべき事態と認識していなかったことが明白だ。
第二は、外務省本省からの抗議を指示する電話が通じなかったということは考えられないということです。
外相 抗議については、指示を試みたが、査証担当副領事の電話につながらず、抗議の指示が届かなかった。
児玉 指示が電話で通じなかったというが、どうしても理解できない。
外相 副領事の電話が使われていた状況にあったのかなと推測する。
児玉 外務本省と瀋陽総領事館、北京大使館の間には、高速データ通信、KDD、インテルサットなど複数の通信手段がある。高速データ通信は話し中で通じないということはない。
児玉氏は、外務省が総領事館以外に、在中国大使や総領事にも連絡をしたかをただしました。
児玉 岡崎総領事、中国大使館の阿南大使にも独自に指示をしたのか。
外相 いま、他に連絡できるところがあったはずと思うのは容易だと思うが、このときには、現場の副領事に一刻も早く指示を伝えたいと思っていた。もっと他に連絡できたではないかとの感じを持たれることも分かるが、現場のこの時点での緊迫した情勢の中でそうなってしまったと思う。
児玉 十五時前、在中国大使館公使から瀋陽の査証担当副領事に対して、「無理はするな」と述べたとなっている。「無理はするな」という指示が公使から瀋陽に届いたということは、「抗議」の指示が少なくとも北京の大使館には届いていなかったことの証明ではないか。
外相 かなり緊迫した雰囲気で、不測の事態が起こるかもしれないということで「無理をするな」と公使がいった。
外務省は、抗議するどころか、やったことは亡命を希望する手紙をつき返し、中国側に措置をゆだねるということでした。
児玉 十四時三十分ごろ、警備担当副領事が英文の書簡を手渡されたが、内容がよくわからなかったため返却。手紙を本人に返す行為は、亡命者は受け付けない、後のことは先方に任せると相手側に考える要素を与えたことにならないか。
外相 非常に緊迫したなかで本人が冷静に物事を判断できるような状況であったかどうか考える余地がある。
第三は、十六時(現地時間)の外務省報道官の記者会見が示している問題です。
児玉 外務省服部則夫報道官が十六時に記者会見をした。この時点での外務省の認識をよく示している。「北朝鮮人とおぼしき五名が在瀋陽の日本総領事館に侵入を試みたようでありますが、その総領事館を警備する中国の警察がこれを阻止しまして、結局五名は瀋陽市の公安当局へ連行された」。ここには抗議も不同意もかけらも出てこない。
外相 本省のなかの情報の連絡の体制が十分であるかどうかという観点から、反省をしなければならない。