2002年5月25日(土)「しんぶん赤旗」
〈問い〉 DVD(デジタル多目的ディスク)が売れているようですが、俳優や声優には権利がないと聞きました。どういうことでしょうか。(東京・一読者)
〈答え〉 音楽CDが売れれば、歌手には売り上げに応じて一定の報酬が入ることが法律と契約で保障されています。しかし映画のビデオ・DVDが売れても、出演する俳優・声優には一円の報酬も入りません。製作者との特別の契約があれば報酬を得ることができますが、多くの俳優などはこの契約を主張しにくい地位にあります。現在の著作権法では、俳優・声優に分配される法律上の権利(報酬請求権)がないからです。
今国会に提出された著作権法改正案では、作品を勝手に改変させない権利や名前の表示権など、実演家の人格権が書き込まれました。しかし報酬請求権など財産権は未着手です。
いま大人気の映画「ハリー・ポッターと賢者の石」が五月にDVDが発売され、三十一カ国で同時リリースされましたが、こういう場合、アメリカでは俳優の組合と映画製作者との契約で、ビデオ・DVD収入の4・5%が出演者の中で分配されるなどとなっています。日本でも多くのビデオ・DVDが発売される予定ですが、日本では売り上げがいくらのびても、出演する俳優・声優には報酬請求の権利がなく、一円も報酬が入らず、契約上でも弱い立場です。
この点では世界知的所有権機関(WIPO)の議論でも、映像実演家に権利を付与することに大勢が合意しています。日本では将来、俳優など映像の実演家に権利を付与することを前提に、必要な契約システムのあり方を関係者で協議し、国内法での対応が検討されています。
日本共産党は、一九九五年に著作権法改正と芸術家の著作権保障を提言するなど、関係者と運動を続け、今国会でも俳優などの「地位向上」を規定した文化芸術振興基本法の立場で、製作者に対して弱い地位の俳優らに、DVD・ビデオの売り上げに対する「報酬請求権」を与えるよう主張しています。
(潤)〔2002・5・25(土)〕