2002年6月1日(土)「しんぶん赤旗」
〈問い〉 今国会で身体障害者補助犬法が成立したそうですが、どんなことを決めたのですか。(東京・一読者)
〈答え〉 超党派で提出された身体障害者補助犬法案が五月二十二日に成立しました。
「身体障害者補助犬」(盲導犬、介助犬、聴導犬)は、障害者の自立と社会参加に大きな役割を果たしています。ほとんどの先進国では補助犬の活用は権利として認められ、アメリカのADA(障害をもつアメリカ人法)では、雇用・交通機関・公共施設・一般営業施設などで補助犬の同伴を差別しないよう規定しています。日本では、ホテルやスーパーなど同伴が断られることが多く、同伴を認めるよう法的に規定してほしいと要望されてきました。
今回成立した身体障害者補助犬法では、(1)補助犬の訓練事業者は、良質な補助犬の育成を図るため、身体障害者が必要とする補助を的確に把握し、訓練をする(2)筋ジストロフィーや脳卒中後遺症など「必要とされる補助が変化する身体障害者」の場合には、医療側と連携し、補助犬の使用状況の調査や必要な再訓練を実施する(3)国などの施設(事業所や住宅も含む)、公共交通機関、「不特定多数が利用する施設」では、補助犬の同伴を拒んではならない(4)民間の事業所や住宅では、補助犬の使用を拒まないよう努める(5)補助犬の適切な認定は厚生労働大臣が指定する「指定法人」がおこなう(6)国や自治体は補助犬の役割について、国民の理解を広げる―などを定めています。
日本の盲導犬の実働頭数は約八百五十頭ですが、利用希望者はその九倍を超え、介助犬(肢体不自由者の物の拾い上げ・運搬、着脱衣の補助、起立・歩行の支持など)や聴導犬(聴覚障害者の電話の音や障害者を呼ぶ声、危険音の聞き分けなど)の実働頭数はごくわずかです。補助犬の訓練や育成はボランティアに依存しており、訓練経験の蓄積や認定基準の確立など、適切な補助犬を確保するための課題も抱えています。
(一)
〔2002・6・1(土)〕