日本共産党

2002年6月2日(日)「しんぶん赤旗」

どこを向く被爆国首脳の目

外信部長 三浦 一夫


 非核三原則の見直しはあり得る―これが、人類史上初めての核兵器の使用によって数十万の同胞を失うという悲劇を体験し、そのゆえにこそ、核兵器を持たず、つくらず、持ち込ませないことを国是としてきた日本の政府首脳のことばでしょうか。

国際感覚ゼロ

 いま、南アジアでは、インドとパキスタン間が緊張し、戦争の危険がいわれています。核兵器保有能力がある両国だけに、核兵器の使用の危険すら指摘され、世界中が憂慮しています。そうしたなかでの政府首脳の発言であり、それを受けた小泉首相の「どうっていうことはない」発言です。軽率どころではありません。常人の理解と感覚からは考えられない国際感覚ゼロの体質を無残にさらけだしたものです。

 福田官房長官は、「法理論上のこと」「さまざまな論議の一つ」などといいます。しかし、いま世界が日本の政府に問うのは、法律研究者としての見解や「さまざまな見解」などではなく、被爆国政府の責任ある政治家としての発言です。政府首脳としてまずいうべきは、憲法を変えればこうなるなどということではなく、憲法と日本の国是からすれば、核兵器はいかなる理由によっても認めない、いかなる状況があるにせよ核兵器を使用してはならない、ということであるはずです。

 福田発言を聞いたアジアと世界の人々は、これを日本の核兵器保有準備発言ととるでしょう。その意味でも、責任が厳しく問われます。

 何が何でもと、有事法制の実現を狙う姿勢といい、今回の核兵器容認発言といい、共通するのは、世界の流れを全く考えない政治姿勢です。

 人類にとって今日最も重要かつ緊急な課題は、核兵器を持てるかどうかを検討することではなく、核兵器をいかになくしていくか、いかにして戦争に備えるかではなく、いかにして戦争をしない平和な世界を実現するかにあるはずです。今回の発言は、そういう世界の流れと課題に背く小泉内閣の姿勢を映し出しているといえるでしょう。

米戦略の影…

 小泉内閣の中枢からこのところなぜ、小型核兵器なら持てるとか、非核三原則見直しなどの発言が相次いで飛び出すのか。そこには、ポスト冷戦時代の核戦略と称して、核兵器を使用する、使用しやすい核兵器を持つというブッシュ政権の新たな核戦略の影がみえます。ブッシュ政権の路線にいかに応えるかを考え、政策を立案する政府の体質そのものです。

 「有事」が国会で論議されています。しかし、世界の流れを無視し、常人の感覚を失い、ワシントンの眼鏡でしかものを見られない政治家が国政をあずかっている現実こそが、重大な「有事」ではないでしょうか。

 


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