2002年6月3日(月)「しんぶん赤旗」
六月中に税制「改革」の基本方針をとりまとめようと、政府の経済財政諮問会議と税制調査会が、それぞれ議論を続けています。
両者が「対立」しているかのような報道が目立ちますが、これまでの議論から浮かび上がっているのは、「弱きをくじき強きを助ける」という方向での明確な一致です。
経済財政諮問会議と政府税調の最大の狙いが、消費税の大増税にあることは疑問の余地がありません。
政府税調は基本方針に消費税率引き上げを明記しようとしています。
その時期と税率はぼかしておく戦術のようですが、石弘光・政府税調会長は本音を隠していません。
時期は「政治・景気情勢が好転すれば二、三年後に始まる」。将来の税率は「二けたの前半くらい」(いずれも五月二十四日の記者会見)。「10%に持っていく」(一日の衛星放送番組での発言)―。
もくろみを実現するための作戦は二段階戦術です。「第一段階として(消費税への)信頼度を取り戻す努力を最大限にする」「二段階目にそういうこと(税率アップ)が待ち受ける」(石会長)―。「信頼度を取り戻す努力」とは、簡易課税や免税業者の適用を縮小するなど、いわゆる「益税」対策です。
経済財政諮問会議が照準を合わせているのも、「益税」対策による「第一段階」の突破です。今回は税率アップを盛り込まないとしていますが、内閣支持率の急落で、国民が強く反対する増税を前面に押し出せなくなったにすぎません。
政府は口を開けば「中小業者の益税が問題だ」と宣伝してきました。
しかし中小業者は、取引先や消費者からきっちり消費税を取るという点でも極めて弱い立場です。まともな価格に消費税を上乗せできる中小業者はほとんどありません。それどころか、資本にものを言わせた大手の安売り攻勢や下請け価格の引き下げ圧力にさらされ、大多数が赤字に追いやられているのが実情です。
消費税納税のために借金をする例が増えているのはこのためです。
しかも、消費税の課税売上高に対する割合で見ると、免税業者はわずか2・5%、簡易課税の適用業者も5・5%にとどまっています。
これが消費税の大問題であるかのような宣伝は、低所得者ほど負担が重いという消費税の根本欠陥を覆い隠す策謀にほかなりません。
消費者と中小業者は消費税の最大の被害者です。「酷税」を「益税」と逆さまに描くのは、被害者同士の対立をあおる卑劣なやり方です。消費税は税率を引き下げ、廃止するしかありません。
諮問会議は、税率をさらに引き下げる露骨な大企業・大金持ち減税を狙っています。その点は十分やってきたという政府税調は、資産家の贈与税減税や大企業の研究開発への一段の税優遇を打ち出しています。
その限りでの相違はあっても、消費税をはじめ、所得税の課税最低限引き下げや赤字中小企業が標的の外形標準課税導入など、庶民や中小企業への大増税では一致しています。くらしを狙い撃ちにした増税の一方で、大企業・大金持ちには減税してやろうという大枠は変わりません。
見過ごせないのは、税制や審議中の医療改悪のみならず、小泉内閣が年金や失業給付でも、国民への負担増・給付削減を迫る大改悪を狙っていることです。くらしへの血も涙もない攻撃に対しては、国民的な総反撃でこたえる以外にありません。