日本共産党

2002年6月4日(火)「しんぶん赤旗」

非核3原則見直し発言

「国是」をもてあそぶ内閣に

政権は任せられない


国際的信頼傷つける

 「大きな政策転換であり、言うはずがない。内閣が吹っ飛んでしまう」

 福田康夫官房長官は三日午前の記者会見で、「政府首脳」発言として報道された自身の「非核三原則」見直し発言(五月三十一日)そのものを否定してみせました。

 ならば、「内閣が吹っ飛んでしまう」ような首脳発言を「あれはどうっていうことはない」と容認した小泉純一郎首相の発言(一日)はどうなるのか。非核三原則という「国是」をもてあそび、自分の発言にも責任をもてないような内閣に、政権を担う資格は断じてありません。

 「政府首脳」発言として伝えられた福田長官のオフレコ発言は、「(非核三原則は)国際情勢が変化したり国民世論が核を持つべきだとなれば、変わることがあるかもしれない」というものでした。

 国際情勢なり世論なり、状況が変化すれば、非核三原則見直しもありうるということになれば、それを「国是」として内外に表明してきた、歴代政権の立場をも根底からくつがえし、日本にたいする国際的信頼を著しく傷つけることになります。

 一九七一年に衆院で非核三原則を決議したさいの提案説明は、それまで政府の政策表明のみであったのを院の決議とすることについて、「非核三原則を有効なもの」にし、「国民の総意として内外に鮮明にすることは、きわめて大きな意義がある」としました。これを受け、当時の佐藤栄作首相が「政府として非核三原則を順守する」旨を表明しました。

 その後、歴代自民党内閣は「三木内閣後といえども、この非核三原則は守られるべきもの。日本不変の原則」(七五年、三木首相)、「不動の政府の方針」(七七年、福田首相)、「非核三原則を国是として堅持していく。今後においても変わりはない」(八〇年、鈴木首相)と、「不変の原則」との立場をくりかえし表明してきました。

「迷惑かけた」ではすまない

 福田長官の発言は、歴代政府がこうして曲がりなりにも堅持を表明してきた「国是」を一夜にしてひっくり返してしまう重大発言だったのです。内外の批判が一気に噴出したのは当然です。

 にもかかわらず、小泉首相や福田長官の対応は、発言の重大性への認識を欠いた、あまりにもいいかげんでふまじめなものでした。

 批判にあわてた福田長官が「政府首脳」名でおこなった釈明(一日)は、「現内閣において、非核三原則の変更や見直しを考え、あるいは今後の課題として検討していることは全くない」というものでした。

 「現内閣」という限定をつけること自体、将来の見直しもありうるということであり、非核三原則が「国是」=「不変の原則」であることをまったく理解していないことの告白でした。この一事をもってしても、官房長官失格です。

 福田長官の「非核三原則」見直し発言をいさめるどころか、「どうっていうことはない」とやりすごそうとした小泉首相の感覚にはあきれるばかり。内外の批判を「騒ぎ過ぎ」と切って捨てる首相には、非核三原則という「国是」の重みはまるで理解できないらしい。

 世界で唯一の被爆国の政府が発信した誤ったメッセージは、国内外に深刻な波紋を広げ、日本の国際的信用を失墜させました。

 「ご迷惑をかけた」などと謝ってすむ問題ではありません。まして、発言を報道したマスコミへの八つ当たりなど論外です。福田長官の罷免はもちろんですが、もはやこの内閣が存続すること自体が、日本の国益を損ない、日本国民にとって大きな不幸です。(政治部長・小木曽陽司)


「非核3原則は不変・不動」

歴代総理・閣僚の答弁

 歴代政府は非核三原則について将来とも「国是」として堅持する立場を表明してきました。主なものを紹介します。

 非核三原則国会決議に関する趣旨説明から

 「一切の核兵器の禁止に対する国民の悲願を体し、単なる可能性を持つ政府の政策としての非核三原則を、国権の最高機関である国会において、核兵器の製造、保有、持ち込み禁止を明確に決議し、国民の総意として内外に鮮明にすることは、きわめて大きな意義のあるもの」「この決議は、非核三原則を国の基本方針と……するものである」(一九七一年十一月二十四日・衆院本会議)

 福田赳夫外相

 「政府はあくまでも非核三原則を堅持していく。おそらく自由民主党政権が続くであろうと思いますが、この佐藤内閣の方針はわが自由民主党内閣を背景にしている政策でありますので、当然次の政権にも引き継がれていく」(七一年十一月十五日・衆院沖縄返還協定特別委員会)

 三木武夫首相

 「自民党は非核三原則というものをやはり決定をしておりますし、国会においてもこれを順守すべしという決議もございますし、三木内閣後といえども、この非核三原則は守られるべきものであると考えております。(非核三原則は)日本の不変の原則でございます」(七五年二月十三日・衆院予算委員会)

 福田赳夫首相

 「非核三原則はこれは堅持してまいる、これは不動の政府の方針でございます」(七七年三月十八日・衆院予算委員会)

 「(非核三原則は)国会の御決議でもあり、私どもは憲法にも似た国是である」(七八年二月十三日・衆院予算委員会)

 「いかなる政府ができましても、国会が非核三原則を遵守すべしということを決議いたしておるわけでありまするから、この決議が健在である以上、その決議はいかなる政府によっても守らなければならないし、守られる、かように考えます」(七八年三月六日・衆院予算委員会)

 鈴木善幸首相

 「国是というのは、私は、国民世論に支持されておる重要な政策である、基本的な政策である、……そういう意味合いからいたしますと非核三原則はまさに国是である」「政府としては、今後におきましても引き続いて、いかなる状況のもとにおきましてもこれを誠実に守っていく、堅持してまいる考え」(八一年五月二十九日・衆院外務委員会)

 安倍晋太郎外相

 「ある外務大臣はかつて、非核三原則をまくらに討ち死にする、こういうことを言ったこともあるわけでございますが、日本としてはそのぐらいの覚悟で非核三原則というものを守っておるし、今後も守りつづけていく」(八三年四月十二日・参院外務委員会)

 中曽根康弘首相

 「(非核三原則は)終始一貫して国是であると申し上げます」(八三年四月四日・参院予算委員会)


福田官房長官の記者会見(要旨)

三日午前

 ―政府首脳の非核三原則見直し発言は国内、海外で反発が出ているが。

 福田 報道が出てびっくりしているが、わが国は非核三原則を堅持している。政府としては今後も堅持する立場に変わりはない。

 私は、将来、非核三原則を見直す可能性もある、そういう考えを何も示したことはない。どうしてこういう報道になるか、報道の正確さにおいては心外だ。真実を報道していただきたいと思っている。

 ―長官は、政府首脳に真意を確認したか。

 福田 真意を確認した。確認したところ、そういうことは言っていないということをはっきり言っていた。

 ―政府首脳の責任を問う考えは。

 福田 そういう必要がありますか。全くないと思う。

 ―誤解を与える発言をしたのは事実ではないのか。

 福田 どういう発言をしたか知らないが、わが国の非核三原則というのはみんな知っていること。それを前提とした話だ。そういう大事な発言を、どういう場で言ったかということは別にして、言うはずがない。そういう大きな政策転換を。もしそんなことを言えば、内閣はそのとたんに吹っ飛んでしまう。

 そんな大事な国の方針だから、どういうふうに勘違いされたか知らないが、報道というのは慎重であってほしい。もちろん政府首脳も慎重でなければいけない。

 しかし、それ以上に、このことの影響の大きさを考えるならば、報道機関のペン一つで世の中を変えることはあってはいけないことだと思う。

 ―政府首脳に対し、どういう場で確認したか。

 福田 どういう場で?

 難しい質問をされている。政府首脳がだれかということは、報道機関のほうでおわかりだと思う。

 ―有事法制の審議への影響は。

 福田 今回の報道が、そのとおり理解されてしまうということであるなら、これは本当に内閣が吹っ飛んでしまう。そういう事実があればの話だ。そういうことではないのだから、ご理解をお願いしたい。

 ―この際、この政府首脳がだれかということを公表されるつもりはないか。

 福田 これは、記者との関係もあるので、また相談してみよう。

三日午後

 私の発言が、将来、政府として非核三原則を見直す可能性を示したものと受け止められ、独り歩きをしていることは、真意ではない。

 私の発言は、国の安全保障の在り方について、それぞれの時代状況、国際情勢等を踏まえたさまざまな国民的議論、そういうものがあり得るということを述べたものであり、政府として今後の方向性を示したものではない。若い記者が、将来のことをいまからしっかり考えてほしいという期待も込めて発言をした。

非核三原則をめぐる

福田官房長官と小泉首相の発言

 五月三十一日夜、福田官房長官のオフレコ発言(「政府首脳」発言) 「非核三原則は今までは憲法に近いものだった。しかし、憲法も変えようという時代だから、国際情勢が変化したり世論が核を持つべきだとなれば、変わることだってあるかもしれない」

 同日夜、小泉首相がソウルで記者団に 「国民感情がどうなるかわからないが、私の内閣では非核三原則を堅持する。今は(見直しは)考えない」

 六月一日午前、小泉首相が記者団に 「(『政府首脳』発言にたいして)いや、あれはどうってことないよ」

 同日午後、福田官房長官が記者団に語った弁明(「政府首脳」発言)

 「私の発言が将来、政府として非核三原則を見直す可能性を示唆したものと受けとめられ、独り歩きしているが、それは真意ではない。現内閣において、非核三原則の変更や見直しを考え、あるいは今後の課題として検討しているということは全くない」

 


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