2002年6月6日(木)「しんぶん赤旗」
衆院有事法制特別委員会は五日、有事三法案についての地方公聴会を仙台、鳥取の両市で開きました。有事法制は必要との立場を表明する意見陳述者からも、不安・懸念の声や、「慎重審議」を求める声が上がりました。
鳥取市では、今国会での早期成立を求めたのは七人のうち一人だけでした。
片山善博・鳥取県知事は、有事法制は必要としつつも、「都道府県知事が何をすればいいのか、何ができるのかをちゃんと明確にしてほしい」とし、「議論は不十分だ。(国民の)合意が得られるような審議を」と述べました。
与党推薦の大西龍夫氏(税理士)も、有事法制が発動される「武力攻撃事態」について「わかりにくい」と指摘。「わが国は危険なことをやってきた過去の積み重ねがある。きれいな言葉を使っても(周辺諸国に)どこまで信じてもらえるかわからない」とし、「継続審議」を主張しました。
渡辺久丸・島根大学名誉教授は「憲法は戦前の一切の軍事立法、弾圧立法の廃止のうえに成立した。戦争に備える今法案が、合憲的法律として成立する余地はない」と強調。小倉道雄・鳥取大学名誉教授も「(太平洋戦争は)国民を悲惨のどん底に陥れた。平和憲法の大切さを身にしみている」「(法案について)憲法上疑義があるという国民の思いは当然」と述べました。日本共産党からは、赤嶺政賢議員が質問に立ちました。
仙台市では、八人が陳述。「法案の内容が国民に知られていない」という意見が共通して出されました。
与党推薦の陳述人も、有事法制推進の立場を表明しつつ、「国民が知りたいのはどうやって私たちを守ってくれるか。過去の一部の(軍部の)暴走をどう止めるかを論議し、国民に分かるよう示してほしい」と注文をつけました。
小田中聰樹・東北大名誉教授は、防衛庁個人情報リスト作成問題にみられるように、「国民を警戒、監視、統制、動員するシステムを拡大・強化する『平時の有事化』は人権と民主主義の危機だ」と主張。「有事三法案は違憲であり、不要、有害だ。有事立法か憲法かの歴史的岐路に立って国会が大局的見地から賢明に対処し、廃案とするよう強く望む」と述べました。
東北学院大学の遠藤恵子教授は「『国民の協力』が際限なく広がる不安がある。協力しない場合、どうなるかも明記されていない」など五点にわたって疑問を提示しました。
日本共産党からは、木島日出夫議員が質問に立ちました。
九州地方知事会(会長・平松守彦大分県知事)は五日、国会審議中の有事三法案について、国と地方の責務・役割分担の明確化や、地方自治体の意見の尊重などを求める特別決議を採択しました。
同決議では「一般的には、武力攻撃事態に至った場合、国と地方が一体となり、住民の生命、財産を守っていくための法制の整備は必要」との立場をとりつつも、在日米軍基地の約75%が集中する沖縄県をはじめ、佐世保、岩国など九州・山口地方は、米軍基地の占める割合が高いと言及。有事法案について、「我が国の安全保障や米軍基地のあり方を含めて十分に議論していただく必要がある」と要望しています。
地方公共団体にかかわる責務や役割について、「具体的な内容が明確になっているとは言えず、内容いかんによっては、住民生活や地域経済活動に少なからず影響を及ぼすことも懸念される」と指摘。具体的な責務・役割分担を早く明確にすることや、「地方公共団体の意見を聴取する場を設けるとともに、その意見を十分尊重すること」を求めています。