2002年6月10日(月)「しんぶん赤旗」
六十五万円の医療費未納を苦に胃がん患者が治療をちゅうちょし、入院後に死亡した――。長野県民主医療機関連合会は九日までに、深刻な不況やリストラの中、経済的理由などで受診・治療が困難になっている実態調査結果を発表しました。
医療現場で相談援助にあたっている同会のソーシャルワーカーが調査しました。調べた百四十例のうち、リストラや倒産などで九十八人が無職、七十七人が無保険でした。ホームレス化も進んでいると指摘。医療費が払えず必要な医療が受けられない例は六十三人に及び、うち六人が手遅れで死亡していました。
胃がん患者の場合、心配した病院側は訪問して対応。患者の経済的負担を軽減するため、自治体に国民健康保険(国保)高額療養費の受領委任払い方式を申請しましたが、国保に滞納があることを理由に認められませんでした。認められたのは、患者の死亡後です。
会見した渡辺彰三事務局長らは、「国民皆保険は、必要な時、必要な医療を受けられることが前提。制度がありながら、医療を受けることが困難になっていることが問題だ」「国民の生存権を奪い、診察、治療を受ける権利の侵害を広げる医療改悪を阻止したい」と語りました。
医療改悪法案をめぐる国会情勢が緊迫するなか改悪を食い止めようと、東京・文京区の東京保健生協みのり支部は八日、同区内の商店街でおこなった街角健康診断の会場で、医療改悪反対の署名を訴えました。
買い物帰りの人や、近所の人が、骨密度測定や歯茎チェックを終え、次々に署名しました。
年金は月五万という一人暮らしの越石ミチ子さん(84)は、「値上げはやめてほしい。年金生活なのに生きるかいがなくなってしまう」と署名。
心臓病の八十歳の母親と二人暮らしの女性(55)=公務員=は、「ボーナスからも保険料とられると職場でもみんな怒っています。三割負担になったら、よほどのことでないと医者には行かないと思う」と。改悪案で老人医療の自己負担限度額が月一万二千円まで上がると聞き、「本当ですか?知らなかった…。年取ったら死んでください、といわれてるようなもんじゃないですか」と絶句。母親と二人で署名に応じていました。
隣に住む人と連れ立ってやってきた坂元八重子さん(76)は、「収入も少ない年寄りが値上げになれば病院にかかれない。孫も窓口負担が高いので重くなってからしか医者にいかず、結局高くついたといっています。改悪はやめてほしい」と語っていました。
《高額療養費の受領委任払い方式とは》
高額な医療費がかかった場合、いったん医療費の全額を窓口で払いますが、自己負担額を超えた部分は後から返ってきます。受領委任払い方式は、窓口で自己負担部分のみを払い、残りの部分は保険者の自治体が医療機関に払います。