2002年6月12日(水)「しんぶん赤旗」
〈問い〉 かつて禁止されていた持ち株会社が認められているのはなぜでしょうか。(福岡・石川生)
〈答え〉 持ち株会社とは、株式保有を通じて他社を支配する親会社です。本業というべき事業活動をせず、もっぱら他社支配のための会社を「純粋持ち株会社」と呼び、本業を営み他社も支配する会社は「事業持ち株会社」と呼びます。
純粋持ち株会社は戦前、三井や三菱などの一族が握る財閥本社でしたが、戦後、財閥は解体され、純粋持ち株会社も独占禁止法で全面禁止されました。独占禁止法は事業持ち株会社の株式保有も制限しました。
しかし、一九九七年の独占禁止法改悪で、純粋持ち株会社が解禁されました。今年四月の法改悪では、大企業の株式保有の総額制限を廃止し、事業持ち株会社の制約もなくなりました。これらによって、持ち株会社の「全面解禁」というべき状況になっています。また銀行など金融機関に課す株式保有の制限から、証券会社を除外しました。
これらは財界の強い要望にこたえたもので、持ち株会社をテコに、合併・吸収による企業再編やリストラを大規模に進めるためです。九七年の法改悪後、みずほホールディングスなど、巨大企業グループの持ち株会社が誕生し、「株主利益」の名のもと、グループの子会社などの身勝手な切り売りや合併、買収が横行しました。多くの下請け・関連企業が切り捨てられ、労働者には分割会社への出向・転籍強要や賃下げ、解雇などが押し付けられています。
いま横暴な吸収・合併・分割を規制し、労働者らの権利を守ることが急務となっています。EU(欧州連合)では、企業買収・売却や合併でも、労働者の権利と企業の義務が引き継がれるとの「既得権指令」を発しました。ところが日本では、EUのような雇用と労働者の権利を守るルールが不十分なうえ、子会社労働者の親会社・持ち株会社との団体交渉権さえ奪おうとしています。
(博)〔2002・6・12(水)〕