2002年6月14日(金)「しんぶん赤旗」
外形標準課税を導入して法人課税の実効税率を引き下げる―。小泉純一郎首相が七日に経済財政諮問会議(議長=小泉首相)と政府税制調査会(石弘光会長)に出した指示が大問題になっています。いったいどんな税金なのでしょうか。(石井光次郎記者)
総務省が検討している外形標準課税は、単年度の利益、給与、支払利子、支払賃借料の合計額(付加価値額)と資本などが課税の基準です。合計額が基準になるので赤字で利益がなくても税金がかかります。とくに給与部分が合計額の約半分を占め、“人頭税”(注)の性格が強い税です。
この仕組みを法人事業税(都道府県税)の税収(過去十年の年平均税収は約四兆円)の半分に導入せよというのが小泉首相の指示です。なぜこれで法人課税の実効税率が下がるのでしょうか。
現行の法人事業税は所得を基準に課税します。赤字企業は、税金を払う必要はありません。外形標準が導入されると、現行では黒字企業(七十七万五千社)が負担する法人事業税のうち、半分はこれまでどおり所得が基準です。しかし税率は9・6%から4・8%に半減します。残り半分が外形標準で、赤字企業(百六十七万九千社)も加えた全法人(二百四十五万四千社)が負担します。法人事業税の税収が同じなら、赤字企業が新たに負担するため黒字企業の負担は減ります。
もともと政府は、深刻な不況による地方税収の落ち込みを口実に、課税ベースの拡大=中小企業増税=のために外形標準課税の導入をねらっていました。「全法人の三分の二の欠損法人(赤字法人)は税金を払っていない」などと“不公平”攻撃を繰り返してきたのです。
それが法人課税の実効税率引き下げの手段として出てきたのは、経済「活性化」の目玉が欲しい小泉首相と法人税率引き下げを求める財界の要望を“合体”させようとしたからです。
「税金を払っていない」というのも事実をゆがめています。日本商工会議所の試算では、中小企業は赤字でも黒字でも、法人住民税の均等割や固定資産税など、外形基準の税金を年間六兆四千億円も負担しています。不況で苦しむ中小企業は、いまの負担でも大変で、それすら払えない会社も増えています。人を雇って事業をするだけで税金をとる外形標準課税は、税金を負担する能力を無視した中世の“人頭税”のようなものです。
「ほんの一握りの高収益企業は減税かもしれないが、中小企業の九割以上は増税。税金は担税力のあるところからとるのが基本です。無理やりとって、鶏を殺してしまえば卵を産まなくなってしまいます」(日本商工会議所)と中小企業団体も猛反発しています。
人頭税 住民に頭割りで同額の税金を課す原始的税制のこと。外からみた形で税金をかけるので、これも外形標準課税の一種です。各国の国民のたたかいで、歴史とともに担税能力に応じた課税が主流になっています。