2002年6月15日(土)「しんぶん赤旗」
国民に総額一兆五千億円もの負担増をかぶせる医療改悪法案の採決を、自民、公明、保守の与党が衆院厚生労働委員会で強行しました。
前日に地方公聴会を開いたばかりです。「十分に審議をつくしてほしい」との公述人の意見にも耳を貸さず、中央公聴会も開かず、与党単独で強行しました。
こういう暴挙は絶対に認めるわけにはいきません。
参考人質疑や地方公聴会の審議を通じても、負担増がいかに患者・国民のいのちと健康を脅かし、日本経済を深刻化するかが浮き彫りになっています。
たとえば、肺気腫で酸素濃縮装置が二十四時間外せないお年寄りの場合、自己負担が月三千四百円から一万一千二百円へと三倍以上に引き上がります。患者の家族は値上げされたら「もう病院へはかかれない」と訴えています。
参考人が訴えた、こんな深刻な実態を与党三党の議員は、何と聞いたのか。
自民党推薦の参考人(日本医師会)からも、「負担増はとくに在宅療養の人たちにとって大きな問題だ」として、「修正」を求める意見が出されたのではないのか。
連合の代表が述べたように、国民が雇用や生活、将来への不安を強めている時に、大幅な負担増は行うべきではありません。これは経済の常道です。
国民の切実な声に背を向け、国会のルールを踏みにじった採決の強行は撤回するべきです。
見過ごせないのは、多数の国民が医療改悪案に反対する意思を示しているなかで、これが強行されたことです。
負担増に反対する署名は二千六百万、国民の五人に一人が署名するところまで広がっています。六百近い自治体が、国に反対の意見書を提出しています。
マスコミの世論調査でも六割近い人が法案の成立に反対しています。
国会でこの世論動向をつきつけられても、質問の「聞き方の問題だ」と開き直ったのが、坂口厚生労働相です。どう居直ろうと負担増になってもいいとする結果の世論調査などどこにもありません。
この点で厳しく問われるべきは、「医療費の新たな患者負担増に反対します」(九八年参院選の重点政策)との公約に反して、医療改悪の推進役になった公明党です。
「大臣になったら自民党とまったく同じことを主張するようになったのか」と衆院委員会で追及され、坂口厚労相は「そういう方法しかない」と認めています。
政権にしがみつくために公約を投げ捨て、同党所属の坂口厚労相のもとで医療改悪をごり押しした公明党の責任は極めて重大です。国民を愚ろうするその態度は、世論の批判を受けて当然です。
今回の強行採決が、防衛庁の個人情報リスト問題をめぐる国会の異常な事態のなかで行われたことも重大です。
自民、公明、保守の幹事長が防衛庁に圧力をかけて調査報告書を改ざん、全文を隠ぺいした張本人です。小泉内閣と与党が国会を混乱に陥れながら、その打開への責任も放棄して医療改悪案を強行したことは、二重三重に国民と国会を冒とくするものです。
改悪案は本会議に上程せず、委員会に差し戻すことを求めます。