2002年6月16日(日)「しんぶん赤旗」
〈問い〉 会社の不正事件が絶えず、うんざりです。こんど改定された商法は、経営者を監視するしくみが弱まるそうですが、どういうことですか。 (新潟・一読者)
〈答え〉 商法は日本の会社経営の基本的なあり方を定めています。経営の意思決定をする取締役会が代表取締役らの執行を監視し、これら取締役会の活動全体を、独立した監査役が監視する仕組みです。さらに株主総会もチェックします。しかし雪印やそごうなどの不正事件では、これら監視機能も働いていませんでした。
五月に成立した商法改定は、国際化・効率化を理由として、大規模会社に「委員会等設置会社」という制度を選択できるようにします。他社重役などの社外取締役が入った取締役会が各種委員会を設置し、会社執行部を監視するたてまえです。しかし会社役員らが社を超えて横断的に連携する日本の企業風土では、社外取締役のチェック機能は期待できません。加えてこれまでの監視機能までなくし、国民が求める、企業モラルや経営者の責任を確立する仕組みは、いっそう後退する改悪です。
例えばこの制度を選択した会社は、従来の取締役会から独立した監査役を廃止し、取締役会内に監査委員会を設けて会社執行部を監視させます。これでは企業内部の監査そのものです。
しかも社外取締役には親会社の経営者や役職経験者も就くことができます。社外取締役は個々の委員会で多数であればよく、一人で複数の委員会も兼務できるため、経営支配権を持つ親会社が、ごく少数の取締役を送るだけで、取締役会も支配できるしくみです。
さらにこの制度を採用した会社では、株主総会の決定事項だった株式配当や役員報酬なども取締役会の権限になります。株主代表訴訟が問える経営者責任を制限した昨年の法改悪も引き継がれ、個人株主らの権利や企業監視も弱めています。
このように違法・不当な企業経営への監視をかえって弱める商法改悪に、日本共産党は反対しました。
(清)〔2002・6・16(日)〕