2002年6月17日(月)「しんぶん赤旗」
防衛庁が、情報開示請求者リスト作成事件の調査報告書を、与党の圧力で隠ぺい・改ざんし、国会に虚偽の説明をした問題で、政府は「防衛庁の判断に基づいてなされた」(福田康夫官房長官)などと、ひとごとのような態度に終始しています。しかし、こんな責任逃れは、通用しません。(榎本好孝記者)
この問題は、防衛庁が十一日の衆院有事法制特別委員会理事会で、リスト作成事件の調査報告書(約四十ページ)の存在を否定、その概要(四ページ)を「調査報告」と称して示し、内容も改ざんしたうえ、これ以外には「報告書はない」と虚偽の説明をしたものです。
防衛庁は政府の一機関です。福田官房長官は「防衛庁の自主的な発表」といいますが、その責任は当然政府にあります。
防衛庁・自衛隊によるリスト作成事件は、憲法が保障する国民の思想・信条の自由を脅かす、きわめて深刻で重大な問題です。
事件が発覚した際、「よく調査してすべて明らかにしなさい」と防衛庁に指示したのは小泉純一郎首相だったのですから、その意味でも国会への調査報告に対する政府の責任はまぬがれません。
福田官房長官は、国会への報告前日の十日、防衛庁から「分厚い」調査報告書をもとに事前の説明を受けました。ところが翌十一日には同庁が発表したものとして四ページの概要しか届けられなかったのに、福田長官は同庁をただそうともしませんでした。
福田長官は、記者からこの点を突かれ、「そんなこと考える暇もなかった」「私どもは他にもいろいろ仕事がある」と言い逃れようとしましたが、無責任きわまる態度です。
防衛庁による調査報告書の隠ぺい、改ざんは、自民、公明、保守の与党三党の幹事長らがかけた圧力によるものでした。政府の調査報告書を、小泉内閣を支える政権党の最高幹部がねじまげていたのです。
政府の立場からすれば、それをただすのが当然なのに、福田官房長官は逆に「いろいろな方の意見を聞くのは当然だ」と与党三党幹事長らの弁護に回りました。
国権の最高機関である国会を欺き、冒とくした今回の防衛庁の行為とそれをもたらした与党の介入は、国会と政府との信頼関係を、政府の側から乱暴に破壊しました。
ところが、小泉首相は「これだけ問題が山積している時に(野党は)なんで大事な審議を放棄するの。分からない」といって、野党に攻撃の矛先を向ける逆立ちぶりです。
小泉首相は「よく調査してすべて明らかにしなさい」と指示していたのですから、それに従わなかった防衛庁と与党幹部の責任を問うのは当然ではありませんか。政府はただちに、事実関係と責任の所在を明らかにすべきです。