2002年6月18日(火)「しんぶん赤旗」
社会保険料の取り立ては「国の先取り権」だとして、倒産した会社の取締役と労働組合が「賃金と退職金の未払いを売掛金で支払う」と合意した労働協約に難癖をつけ、「取り立てる権利を認めろ」と山口社会保険事務局(藤田信明局長)が裁判に訴えるという事件が発生し、大きな問題になっています。
山口県下関市の運送会社、石松運輸が一九九八年六月に倒産、合計四千二百万円もの労働者の未払い賃金や退職金、解雇予告手当の支払いに、大手倉庫会社の未収運賃の売掛金を充当することで労資が合意しました。一方、石松運輸の健康保険料・厚生年金保険料の滞納があると山口社保局が聞きつけ、二〇〇〇年五月、労働組合(現建交労福岡県本部)委員長らを相手取り、取り立て権を請求し山口地裁下関支部に提訴したものです。
裁判官は和解での解決を提案しましたが、山口社保局は拒否しました。そればかりか、石松運輸が不渡りを出したさい、取引先の企業に保険料を取り立てたり、石松運輸の通帳を銀行で解約して残金を持ち去る、車両を勝手に売却して滞納金に充てる、ということまでおこないました。
また、組合側が倒産した会社の運送事業免許を使って運送業を続けている会社があることを指摘し、「その会社に保険金の滞納金を取り立てるべきだ」と申し立てても、これも拒否しています。
建交労県本部は五月十日、福岡県労連や山口県労連の支援もえて、訴訟の取り下げと話し合いによる和解解決を山口社保局に申し入れました。
県本部運輸協議会の山崎貢事務局長は「憲法で団体交渉権を認められた労働組合に、『関係者と交渉で決めたものを取り消せ、社会保険局が取り立てる』ということがまかり通れば、労働組合の権利否定につながり、労働運動にも重大な影響を及ぼします。倒産・解雇で苦しむ労働者のためにも、断じて引き下がれません」と話しています。
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激励先=建交労福岡県本部運輸協議会 福岡市博多区大博町二の一電話092(272)0352
抗議先=山口社会保険事務局 山口市大内矢田八一四の一電話083(927)9133
「未払い賃金の横取りをやめろ」と山口社会保険局に要請する建交労福岡県本部の組合員や支援の人たち=5月10日、山口市