日本共産党

2002年6月23日(日)「しんぶん赤旗」

倒産などでの未払い賃金保護の現状は?


 〈問い〉 会社の倒産などで、未払いの賃金はいまどのくらい保護されるのですか。 (東京・一読者)

 〈答え〉 近年、企業倒産などにより賃金が未払いとなる事例が急増しています。厚生労働省の調べでは、二〇〇〇年度に賃金不払いとなった労働者は六万人を超え、五年前からほぼ倍増です。賃金不払いは労働者の生活困難に直結します。しかし、このような労働者の権利(労働債権)を保護する法制度は不十分で、強化・確立が切実な課題となっています。

 緊急の救済制度としては、賃金の支払の確保等に関する法律による、未払賃金立替払制度が利用できます。企業倒産で未払いの賃金や退職金の一定範囲について、労働福祉事業団が事業主に代わって支払う制度です。

 労災保険の適用事業場で一年以上事業活動してきた企業に適用されます。裁判所への破産申し立てや労基署への倒産認定申請日の六カ月前から、申立・申請日の一年六カ月後までの間に退職した労働者に、退職日の六カ月前からの定期賃金と退職手当の未払い分総額の80%が立て替え払いされます。ただし上限額が年齢別に決まり、四十五歳以上では、三百七十万円までの未払い賃金の80%です。

 このような救済水準の不十分さに加え、日本では労働債権の保護が弱いことも大きな問題です。現行法では労働債権は優先的な債権ですが、金融機関の抵当権や国などの租税債権のほうが、より優先されます。そのため倒産企業の資産が国や金融機関におさえられ、労働者に残らないことが多発しています。それでも、労働組合などの粘り強い交渉で債権の一部を譲歩させる成果もかちとっています。

 労働債権の優先的保護は世界の流れです。一九九二年のILO(国際労働機関)一七三号条約は、労働者債権に国税など大部分の債権より高い順位を与えるよう規定しましたが、日本は未批准です。全労連や連合は、労働債権の優先順位引き上げを求めています。

)〔2002・6・23(日)〕

 


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