2002年6月28日(金)「しんぶん赤旗」
奥州藤原氏が栄華をきわめた歴史舞台として知られる岩手県衣川村。その村立国保衣川診療所では、四月から後発医薬品の採用を始めています。患者の医療費負担をどう軽減していくか、同診療所と日本共産党衣川支部の取り組みをみました。(海老名広信記者)
医科と歯科が併設した診療所は十九床のゆったりした建物です。特養老人ホームなど高齢者施設も隣接。阿部寿之所長(40)は「診療所施設としては日本屈指ですよ。村は高齢者の健康と福祉に重点をおいてますから」。
そういう村の努力に水を差すのが国の医療改悪です。この四月、小泉医療改悪の一環で一回八百円の高齢者の窓口負担が八百五十円にあげられました。「たった五十円でも受診を控えるおばあちゃん、おじいちゃんがいたんです」と顔を曇らす阿部さん。
里山型農山村の衣川村。医療過疎地で前任の所長に請われて赴任したのが九年前。以前の勤務医時代には考えなかった医療経営の効率化や患者負担の軽減に腐心する、といいます。後発品の採用は、少しでも患者負担を軽くし村民の健康と命を守ろう、という思いからでした。不整脈治療の薬の場合、従来品に比べ三割負担の患者の窓口支払い額が月千二百円安くなったといいます。
後発品採用を思い立ったのは二年前。県内の公立診療所が採用し始めたことを知ってから。安全性や配給体制の検討をしてきました。今年二月、患者の菅原恭正さん(75)に「しんぶん赤旗」の読者ニュースを見せられました。
菅原さんが書いた同ニュースには、長崎の開業医が後発品に切りかえた実践例を紹介した「赤旗」日刊紙の記事が再掲されていました。阿部さんは「記事は参考になりました。その医師のように一挙に切りかえはできませんが、三カ月おきに五品目ずつ採用していく予定です」。
後発品とともに村の医療の話題は、四月から実施された就学前児童の医療費無料化です。昨年四月、党支部が同無料化を村に陳情し、実現した成果です。党議員がいない村で力を発揮したのが、読者ニュースでした。「ぜひ実現して」という読者の手紙や、実施している自治体例を紹介するなどキャンペーンを展開しました。
党支部長の菅原明さん(51)は「阿部先生にも手伝っていただき感謝します」と頭を下げます。ニュースに、診療所にどのくらい村の子どもが医療費を支払ったか、阿部さんに算出してもらって掲載。無料化でどれだけの予算がおおよそ必要かを示しました。
しかし、「医療改悪が国民全体にしかけられたら、私たちが協力して健康で豊かに暮らせる村をつくろうとする努力を台無しにしてしまいます。これまでも、読者ニュースで医療改悪法案反対の連載をしてきましたが、もっと宣伝を強めたいと思います」と、来春のいっせい地方選挙で村議会議員に立候補する菅原明さんはいいます。