2002年6月30日(日)「しんぶん赤旗」
〈問い〉 こんど自然公園法に「生物の多様性の確保」が盛り込まれたそうですが、どんなことが求められますか。 (埼玉・一読者)
〈答え〉 日本をはじめ世界の百八十カ国以上が結んでいる生物多様性条約は、生物の多様性の保全が「人類の共通の関心事」であると確認し、各国の保全強化と国際協力を求めています。
日本の国立公園や国定公園、都道府県の自然公園は、多くの野生動植物が生息し、生物多様性の保全にとって重要です。しかし、これらの管理・保全を定めた自然公園法は風景地の保護が中心で、生物多様性は位置づけられていませんでした。
この四月の法改正では、近年の利用者増加による影響への対策などとともに、「生物の多様性の確保」が、国や自治体の責務として明記されました。まだ風景の構成要素として保護する位置づけにとどまっているため、法の目的や公園計画の決定にもりこむなどの強化が望まれるものです。当面、公園の管理や自然保護策にどう生かすかが課題です。
たとえば、国立公園・国定公園内の特別保護地区や特別保護地域などの指定は、これまで林業や開発計画との関係でばらばらに分断されるなど、生物多様性の保全にふさわしいものになっていません。
また多くの絶滅危ぐ種は生息地域が散在し、地域ごとの個体群の保全が重要になっていますが、現状はまったく不十分で、開発などで個体群消滅が続いています。自然公園で個体群がどう保全されるかも重要です。
これらの点からも、公園地域の自然環境を系統的に調査することや、公園計画のありかたを拡充強化すること、公園計画や公園事業の決定過程に住民や自然環境保護団体の参加を保障することなどが求められます。
こうしたことからも、首都東京の国定公園・高尾山にトンネルを掘る圏央道計画などは、生物多様性に重大な障害となるものとして厳しく問われてきます。
(博)
〔2002・6・30(日)〕