2002年7月5日(金)「しんぶん赤旗」
厚生労働省は四日の労働政策審議会雇用保険部会で、失業者急増で財政が悪化している雇用保険制度について、大臣判断で保険料を0・2%の範囲で上下できることを定めた雇用保険法の「弾力条項」適用を、「現時点で発動要件を満たしている」と説明、保険料の引き上げをおこなう方向を示しました。
現在、月収の1・2%としている保険料(労使折半で負担)を1・4%に引き上げる方向で、厚労相は十月にも保険料を引き上げる見通しです。
また会合では、厚労省側が、失業者として認定するために提出を求めている申告書の様式を改定すると説明。今まで求職活動について具体的な記述を求めてきませんでしたが、改定により求職活動日、応募先企業、活動内容などを書かせるようにするとしています。さらに、申告書を抽出調査し、応募先企業に求職活動の事実を確認するなど、失業認定の厳格化にも早急に取り組むとしています。
同部会はまた、今月下旬中間報告の取りまとめに当たっては「給付と負担の両面から全面的に見直すことが必要」との見解で一致しました。中間報告後、さらに議論を進め、年内をめどに最終報告を取りまとめます。厚労省はこれを受け、次期通常国会に「改革」案を提出する考えです。
解 説
失業者急増を理由に保険料引き上げに動くのは何重にもおかしな方針です。失業者が増え、雇用不安が増大したときこそ、同保険制度を充実し、失業者を救済すべきですし、現役労働者にこれ以上の負担をさせるべきではありません。
保険料は労使折半であり、その引き上げは労働者負担と、雇用の八割を支える中小企業の負担を重くし、家計と経営を圧迫します。雇用保険財政悪化の原因の一つは、雇用保険法で定められている国の負担を、政府が長年にわたり低く抑えてきたことにあります。昨年度から本来の四分の一負担に戻しましたが、さらに引き上げてもおかしくありません。かつては三分の一国庫負担の時期もありました。
重大なのは、「給付と負担」の両面を「全面的に見直す」ことです。雇用保険制度は昨年四月から離職理由で給付に差をつけるなど大改悪しました。同見直しはこれをさらに進める危険もあります。
失業は労働者の責任ではありません。政府の経済政策の失敗による不況長期化と、大企業のリストラ・人減らし促進政策に責任があります。失業者を増やしておいて、重い負担と少ない給付で労働者・中小企業を苦しめることは許せません。
(篠田隆記者)