2002年7月7日(日)「しんぶん赤旗」
国民多数が反対している医療改悪法案の審議が参院厚生労働委員会で始まりました。同法案をめぐる動きと廃案をめざすたたかいについて、厚生労働委員会委員の日本共産党の小池晃議員に聞きました。
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――衆院の強行採決のあと審議は参院に移りました。どうなっていますか。
小池 与党の自民党議員から法案の根本部分に疑問が投げかけられています。二日と四日に質問した二人とも根本部分、すなわち三割負担、高齢者の負担増を問題にしました。患者に必要な受診を抑制するのではないか、景気が悪いこの時期に実施すべきではないとか、在宅の医療を受けている高齢者にとってとりわけ重い負担になるとの質問です。
減らされている国庫負担を増やすべきではないかとものべました。結局、この二日間の審議で法案に正面から賛成しているのは公明党だけです。肝心の自民党の議員が法案の根本部分に疑問を投げかけているわけですから、審議は振り出しに戻ったといえます。
厚生労働省も妨害にでてきて、ある自民党の議員にたいし“与党の立場でやっていただかないと困ったことになります”とクギをさした。許しがたいことですが、そんなことも起こっています。
――論戦はどこまですすんでいますか。
小池 この間、野党として要求してきたのは、国民に痛みがおよぶといいながら痛みの全体像を明らかにしていない、こんな無責任な話があるか、全体像を示せと要求してきました。その結果、厚労省は四日の委員会に、負担増の全体は一兆五千億円になると、数字の根拠を含めて資料を提出してきました。
その中身は、医療費や保険料の負担増を低く見積もるなど問題点があり、実際は一兆五千億円より増えるのではないか。さらに追及しなければなりません。
論戦で集中したのは、三割負担による受診抑制と、景気への悪影響です。野党は、これだけ不況で家計消費が冷えこんでいるなか、負担増が悪影響を与えると足並みをそろえています。
さらに負担増は耐えがたいと同時に、これがいまの医療保険の問題を解決しない、逆に医療保険財政を深刻化させ、それがまた保険料・患者負担の引き上げをもたらすという悪循環を招きます。健康保険の財政の悪化は野党だけでなく自民党議員も追及しています。
――小池さんは保険財政悪化の二つの原因を提起しましたね。
小池 そうです。一つは深刻なリストラの影響です。
日本最大の企業グループの健保組合の一つ、日立製作所健保組合で見ると、今年度予算で四年連続、五十六億円の赤字です。リストラによって保険料収入が六十六億円も減少することが原因です。
それなのに保険財政の危機の解決を保険料や窓口負担を増やすことに求めるなら、経済を悪化させて失業や倒産を加速させ、さらに保険財政を悪化させることになります。この指摘にたいし政府は答弁不能で、短期的には痛みをともなうが、中長期的には日本経済にとってプラスになると根拠も示さずにいうだけです。
もう一つ、国庫負担の削減が財政悪化の原因です。中小企業の労働者などが加入する政府管掌健康保険の財政が悪化したら国庫負担率を元に戻すという約束を放置してきた政府の責任は重大です。政管健保への国庫負担(医療分)の削減額は十一年間で一兆六千億円になり、この削減がなければ今日の危機はなかったといえます。そのつけを保険料と窓口負担の引き上げで国民に押しつけることは許されません。
公明党は、この二回の参議院選挙で医療費の新たな負担増に反対する公約をかかげていたのに、いまや負担増の旗ふり役です。負担増反対から賛成へ百八十度方向を変えたのに、坂口力厚労相(公明党)は「同じ方向だ」と、とんでもない態度です。
――延長国会の会期は七月末ですが。
小池 負担増の新しい数字がでてくる、これまでの政府の論拠は崩れつつある、自民党議員からも法案の根本に疑問がでる、唯一の法案賛成固執派は公約違反の政党、こういう参院審議の状況ですから、衆議院で何時間、審議をやったということは全く基準になりません。徹底的な審議が必要です。
ここまで政府を追い詰めたのは、世論と運動の力が大きく働いています。二千六百万人の反対署名、六百にのぼる自治体決議…、この声に与党議員も動かざるをえない。野党も廃案で一致しているのは、世論の後押しがあるからです。
参院の厚生労働委員会は二十五人の委員ですが、医師が八人で、さらに検査技師の資格を持つ人など十人が医療にかかわっています。自民党は五人が医師です。
日本医師会や日本看護協会も明確な反対意見を表明しています。衆院の参考人質疑で日本医師会の代表が条件付き賛成と受け取られる発言をおこなうと、すぐに抗議や質問が地方から上がる、それで改めて医師会が反対の記者会見をしましたが、その空気が日々国会に伝わってきます。
通常国会ですから延長は一回だけで、もう会期は延長できません。審議の定例日は週二回(火、木)で、日程は綱渡りです。しかし追い詰められた与党は何をしでかすかわかりません。
負担増反対の一点で広範なたたかいに発展させ、与党を包囲して野党を激励する、こういう運動が、国会の論戦と合わせて決定的に重要です。その点で“医療改悪反対・有事法制許すな”の7・19全国大集会は重要なポイントになります。
この間のたたかいで悪法をいまだに成立させていないことに確信を持ち、有事法案反対のたたかいと力を合わせ、医療改悪法案の廃案のために日本共産党の国会議員団も全力をあげます。